2022-08-07 改訂
2009-05-29~2022-07-30 実施
いなり、探訪、特別編。山城国深草の稲荷山に鎮座する秦氏の社、伏見稲荷大社を徹底的に探究。アニメ「いなり、こんこん、恋いろは。」の舞台探訪を主題として、伏見稲荷のあらゆる要素を探訪しました。伊奈利山に創建された社と信仰の成り立ちを紹介する渾身の記事です。
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本記事は2014年1~3月に放送された、よしだもろへ氏原作のアニメ「いなり、こんこん、恋いろは。」(略称は「いなこん」)の舞台探訪を主題として作成。同年に初版を公開しています。当初のレポは伏見稲荷大社を十分に探訪できたとは言い難く、後年に様々な文献資料を読んで歴史を学び、補完を繰り返して内容を充実させました。5年後の2019年にようやく全面改訂版を公開し、2022年の補完と改訂をもって一応の執筆完了となりました。「東方巡遊記」の中では最も完成度の高い記事です。
現行版は「いなこん」と東方の元ネタ巡りを織り交ぜつつ、伏見稲荷のあらゆる要素を探訪。稲荷社と秦氏・荷田氏の関係を盛り込み、山背国の伊奈利山(稲荷山)に創建された社と信仰の成り立ちを紹介する渾身の記事になりました。稲荷社の聖地としての歴史を尊ぶ立場から、当サイトではサブカル的な「聖地巡礼」の表現は一切使用しておりません。稲荷山の神様と伏見稲荷大社の中の人に怒られない記事を書くよう心掛けました。アニメに興味の無い方でもお楽しみいただける内容です。
記事は全30ページ。p.1を総合目次として、pp.2-3では深夜~早朝の稲荷山探訪の模様を掲載。幻想的な情景を余すところなく紹介します。pp.4-30は稲荷山に鎮座する伏見稲荷大社を徹底的に探究。これまで知られてこなかった稲荷社の歴史を、インターネット上で一番詳しく、分かりやすく、体系的に解説します。「伏見稲荷大社探訪 VI」(全3ページ)では、本記事の続編として本宮祭の模様をお送りします。掲載した写真は2500枚以上、文章量は本1冊分に相当するボリュームです。
写真とともに稲荷社の歴史を概観するのが本記事の基本構成。ページごとに独立して読めるよう重複させた箇所もあります。稲荷社の正史と文献史学の視点に偏っており、民俗学や民間信仰の要素が欠落しているのはご容赦ください。伊奈利山を根源とする稲荷信仰の本質を理解しているわけではなく、分からない(文献にない)部分を無理やり解明するのは控えました。相当な時間をかけて執筆し、記事の構成も見やすく工夫しておりますので、全部読んでもらえたら嬉しいです。
本記事は稲荷山に鎮座される稲荷大明神の御神徳と、稲荷社が誇る1300年以上の歴史、そして21世紀初頭の伏見稲荷の風景を遠い未来に伝えるという宗教的な使命感を持って執筆しています。2022年の完成版には未だ足りない要素があると認識しており、今後も改訂や加筆を続けて完成度を高める予定です。零細サイト故にアクセスは皆無ですが、この記事が伏見稲荷の歴史と風景を記録した一種の記念碑として末永くインターネット上に残り、後世の人々の役に立つことを願います。
稲荷信仰は非常に複雑な経緯で発展し、様々な要素との習合や変容を経て現在に至ります。稲荷社の歴史は書物の焼失などで分からないことが多すぎ、何一つ断定できません。信頼できる文献を読み込み、情報を照合して自分なりに歴史を理解する必要があります。記事執筆の参考にした文献は以下の通り。各文献には相違する内容もあり、必ずしも正確でないことには留意しなければなりません。奇をてらったトンデモ系の言説は完全に排除していますが、あくまで「諸説ある」という前提でお読みください。
『古事記』や六国史などの歴史書、貴族の日記、社家の由緒記などの史料はリストに含みませんが、情報源が不明にならないよう記事中で適宜提示しながら説明します。稲荷社の歴史をはじめ、稲荷山の史跡探訪と記事執筆には、伏見稲荷の正史として刊行された『伏見稲荷大社御鎮座千三百年史』を特に活用させていただきました。「いなこん」や東方で伏見稲荷に興味を持ったビギナーの方には『稲荷大神』がオススメ。宮司の中村陽氏が監修しており一番分かりやすいです。
荷田東麿翁 |
大貫眞浦 | 会通社 |
1911 |
お稲荷さん | 中村直勝 | あすなろ社 | 1976 |
稲荷信仰 | 近藤喜博 | はなわ新書 | 1978 |
稲荷信仰 | 直江廣治 | 雄山閣 | 1983 |
稲荷総本宮 伏見稲荷大社 | 京都新聞社 |
1984 |
|
稲荷をたずねて | 南日義妙 | 文進堂 | 1987 |
稲荷明神 正一位の実像 | 松前健 | 筑摩書房 | 1988 |
深草 稲荷 | 深草稲荷保勝会 | 稲荷名産館 | 1998 |
日本の古社 伏見稲荷大社 | 岡野弘彦 | 淡交社 | 2003 |
稲荷大神 | 中村陽 | 戎光祥出版 | 2009 |
伏見稲荷大社御鎮座千三百年史 | 上田正昭 | 伏見稲荷大社 | 2011 |
狐の日本史 | 中村禎里 | 戎光祥出版 | 2017 |
世阿弥配流 | 磯部欣三 | 恒文社 | 1992 |
秦氏の研究 | 大和岩雄 | 大和書房 | 1993 |
続 秦氏の研究 | 大和岩雄 | 大和書房 | 2013 |
闇の摩多羅神 |
川村湊 |
河出書房新社 |
2008 |
世阿弥 | 今泉淑夫 | 吉川弘文館 | 2009 |
謎の渡来人 秦氏 | 水谷千秋 | 文藝春秋 | 2009 |
秦河勝 | 井上満郎 | 吉川弘文館 | 2011 |
江戸の金山奉行 大久保長安の謎 | 川上隆志 | 現代書館 | 2012 |
帝都 |
喜田貞吉 |
日本学術普及会 |
1915 |
京都 |
林屋辰三郎 |
岩波新書 |
1962 |
桓武天皇 |
村尾次郎 |
吉川弘文館 |
1963 |
古代を考える 平安の都 |
笹山晴生 |
吉川弘文館 |
1991 |
京都時代MAP 平安京編 |
新創社 |
2008 |
|
京都駅物語 |
荒川清彦 |
淡交社 |
2008 |
恒久の都 平安京 | 西山良平 鈴木久男 | 吉川弘文館 | 2010 |
平安京遷都 |
川尻秋生 |
岩波新書 |
2011 |
桓武天皇 |
西本昌弘 | 山川出版社 | 2013 |
桓武天皇と平安京 |
井上満郎 |
吉川弘文館 |
2013 |
稲荷山(233.8m)の地形図。東山三十六峰の南端に位置し、京阪伏見稲荷駅またはJR稲荷駅でアクセス可能です。伏見稲荷大社の本殿は稲荷山西麓に鎮座。そこから奥社奉拝所を経て中腹の四ツ辻に登り、更に登って三ヶ峰を巡拝します。あらかじめ地形図に目を通すと探訪しやすく、記事も読みやすくなります。市街地に近い低山とは言え、深く入り組んだ地形であることに変わりはありません。参道を逸脱しないようご注意ください。
伏見稲荷の周辺と境内には、分かりやすい案内図が多数掲示されています。稲荷山の地形を正確に描写するわけではありませんが、位置関係やルートの把握に役立ちます。地形図と併せてご利用ください。尚、案内図や標識に記された所要時間は目安であり、詳しく探訪すると1日がかりの行程になります。
探訪のメインカメラはアウトドア用のコンデジ。RICOH G600→G800→WG-6と順次更新しています。印象的な写真を撮るためにフィルム式の一眼レフカメラも多用。マニュアルのASAHI PENTAX SP、オートフォーカスのMINOLTA α-8700i、α-7700iを使っています。フィルムは主にFUJIFILM SUPERIA X-TRA 400、FUJICOLOR 100(ネガ)とVelvia 100(リバーサル)です。時代の流れに逆行しているのは気にしないでください。歴史探訪にはフィルムが適しているのです。