KEYRING

AIR

2023-01-29 加筆
2022-09-17 初版公開

Keyの名作『AIR』Switch版とTVアニメ版、関連書籍の感想を記述します。

「KEYRING」の記述は一個人の感想に過ぎず、攻略・考察・論評といった高度な情報は掲載しておりません。記載内容を過信して発生したトラブルには一切の責任を負いかねますので、必ずサイトの趣旨を理解した上で記事をお読みください。本ページは『AIR』の重大なネタバレを含みます。未プレイの方はご注意ください。
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目次

その空気に触れるまで

全く興味のなかったギャルゲー

Key/ビジュアルアーツの恋愛アドベンチャー『AIR』が発売されたのは2000年のこと。PC向けのエロゲーというマニアックでアングラなジャンルではありましたが、前作『Kanon』と同じく、その感動的なストーリーは当時のエロゲーマーから「泣きゲー」として高く評価されたそうです。翌年には18禁要素を削除したPC版とDC版、その翌年の2002年にはPS2版が発売され、青少年でも遊べる健全なゲームになりました。いわゆるギャルゲーです。

当時の私は戦争物のリアル系FPSに熱狂していました。銃で人を殺すゲームを至高としており、二次元の女の子が登場するギャルゲーは全くもって興味の対象外。そのような軟派なゲームで遊ぶのは恥ずべきことだと思い込んでいました。ギャルゲー中毒の友人からPS2版の『Kanon』と『AIR』をセットで勧められるも、『Kanon』のパッケージの萌え萌えしたキャラ(あゆのことです)を見てドン引きし、『AIR』は絵すら見ませんでした。今思えば、勿体ないことをしたものです。

2005年にはTVアニメ版の『AIR』が放送されました。既に二次元の世界に堕ち、深夜アニメを観るようになっていたものの、Keyのエロゲーは相変わらず興味の対象外。主題歌の『鳥の詩』を初めて聴いたのは2007年の「組曲『ニコニコ動画』」でした。かっこいい曲だと思いましたが、やはり作品自体に興味は湧かず、『AIR』について調べたことはありませんでした。同時期にニコ動の影響で『東方Project』に興味を持ってしまい、東方のあらゆる情報を調べたのと大違いです。

元々アニメに多大な関心を持っているわけではなく、興味のないものには徹底的に無関心を貫くスタイルです。2011年に初めて『新世紀エヴァンゲリオン』を観るまでは、『AIR』と『Air/まごころを、君に』を混同する有様でした。東方にハマった後は、自転車と徒歩で東方ゆかりの地を巡る旅に没頭。長い間Keyの存在を気に留めることもなく、東方中心のアウトドアライフを送ってきました。まあ、2007年以前は東方もエロゲーの一種だと思っていたのですが。

『鳥の詩』を聴いて衝動買い

……月日は流れて2022年7月。私のライフワークになった「東方巡遊記」と「GEARS」の記事執筆は滞っていました。「GEARS」の紹介ページに書いたように、現在の個人サイトはGoogleから冷遇されています。サイトのリニューアル以来、新規ページがインデックスされない(つまりアクセス皆無)状態が続き、8月初旬に長編の探訪記事を書き終えると完全に力尽きてしまいました。気晴らしにFPSを起動するも、人に暴力を振るうゲームは虚しいだけで何の解決にもなりませんでした。

そんな折、YouTubeで適当に選んだ作業用BGMで『鳥の詩』が流れました。おそらく10年ぶりに聴いた「消える飛行機雲」は懐かしくも新鮮で、「これだ!」と直感しました。停滞した活動に新しい風を吹き込み、モチベーションを高め、旅と執筆を続ける。そんな目的で『AIR』なる未知のギャルゲーに手を出そうと決めました。ストーリーや内容は一切知りません。ネタバレを限りなく回避しながら調べて掴んだイメージは、「夏らしい爽やかで感動的な作品」でした。

22年前のゲームですから、遊べる手段は限られます。PS2は手放しており、PC版はボイス無しだったので除外とするも、なんと2021年にプロトタイプからSwitch移植版が発売される奇跡が起きていました。Switchにはギャルゲーが次々に移植されており、『AIR』が気に入ったら他の作品も遊べます。できるだけ新しい体験をしてみたかったので、大きな期待を込めて『AIR』とNintendo Switch Liteを衝動買いしました。携帯ゲーム機の購入は実に24年ぶりです。

Switch版(2022年8月にクリア)

AIR Switch版 AIR Switch版

夏はどこまでも続いてゆく。青く広がる空の下で。彼女が待つ、その大気の下で。

号泣必至のストーリー

人懐っこい神尾観鈴に萌え

Nintendo Switch LiteとAIR Nintendo Switch LiteでAIRをプレイ
何も知らない私のもとに届いた『AIR』とSwitch Lite。明らかにネタバレ感が漂うパッケージは見なかったことにして、小さいカセットを手に取りました。新品のゲーム機にカセットを挿して起動するのは、24年前に買ったゲームボーイカラーと同じワクワク感があります。ゲームそのものは22年前の作品ですが、最新のゲーム機でプレイすると古さを感じません。5.5インチの液晶ディスプレイは大きくてPC並みに綺麗です。音質も良く、実機で体験するOPの『鳥の詩』は最高でした。

ギャルゲーはFPS中毒の私が一度も体験したことのない、全く新しいジャンルのゲームです。開始直後は奇抜な絵柄や言動のキャラに「これがギャルゲーか…」と戸惑ったものの、すぐにメインヒロインの神尾観鈴の可愛らしさの虜になりました。人懐っこくて明るくて純粋な性格に加え、「どろり濃厚 ピーチ味」なる謎ジュースを好み、「にはは」や「がお…」が口癖というキャラ付けも面白いです。声優の故川上とも子氏の演技が、観鈴ちんの魅力を高めていることも挙げておきたいです。

DREAM編:観鈴を救えない無力感

DREAM編の序盤は、主人公の国崎往人と観鈴の平和な日常生活が描かれます。背景CGで田舎町の雰囲気がうまく表現されており、観鈴と一緒に過ごす楽しい日々をリアルに感じられます。私は主人公も含めて女の子ばかり登場する二次元作品を好むので、男主人公のギャルゲーには何となく抵抗を持っていました。実際にプレイしてみると、自分が往人になって観鈴と対話するゲームシステムは普通に受け入れられました。本当に観鈴のような女の子と遊べたら、どれほど幸せなことでしょう。

実はOPの「さようなら」の時点で嫌な予感がしており、中盤から漂い始める不穏な空気に、かなり重いテーマの作品なのだと気付きました。空の向こうで待つ女の子に会いに行くロマンチックな物語になるのかと思いきや、他愛ない日常に挟まれるシリアスな場面に不安ばかりが募りました。観鈴が往人とトランプで遊ぼうとして、突然癇癪を起こすシーンは戸惑うしかありませんでした。孤独に苛まれながらも学校に通い、明るく振る舞う観鈴の姿を見ているのは辛かったです。

往人が幼い頃に亡くなった母親の台詞は、シリアスな語り口で不安を煽ります。この空の向こうには、遠い昔から翼を持った女の子がいること。自分が出会った女の子が見る夢のこと。夢は女の子を蝕み、あるはずのない痛みを感じ、やがて大切な人のことまで忘れてしまうこと。その話は幼い頃から空に憧れ、往人と出会ってから謎の夢を見るようになった観鈴と重なります。この謎を解き明かして、観鈴ともう一人の女の子を救いたい。幸せにしてあげたい。そう切実に思いました。

DREAM編では『AIR』の根幹の設定は明かされません。往人の法術(人形使いの能力)、空にいる女の子、観鈴の癇癪や夢について何も分からないまま話が進みます。ついこの前まで元気いっぱいだった観鈴の具合が悪くなり、本当の母親ではない神尾晴子が無責任な態度をとって家を出ていく頃には、すっかり往人に感情移入しており、観鈴を苦しみから救ってあげられない無力感に吐き気がするほど絶望しました。これで観鈴のストーリーは一旦終わってしまいます。

DREAM編:霧島診療所の楽しい姉妹

観鈴の次は霧島佳乃のストーリーです。佳乃とは観鈴ルートで出会っており、初登場時の明るく子供っぽい雰囲気に萌え萌えだったので、佳乃ルートにはかなり期待していました。佳乃と謎生物のポテト、クールな姉の霧島聖と交流し、霧島診療所に住み込む展開になったときはSwitch Liteを片手にガッツポーズしてしまいました。診療所で繰り広げられる破天荒なギャグは爆笑物で、霧島姉妹との暮らしに安らぎを感じました。妹に尽くす姉の姿にも心を打たれます。

佳乃ルートは本作で唯一の恋愛ストーリーです。順当に進めると見られる佳乃とのキスシーンは、恥ずかしいぐらい初々しい雰囲気で良かったです。佳乃が手首に巻いているバンダナの秘密が明かされた後はシリアス展開になり、遠い昔の「羽根」にまつわる回想が始まります。白穂の回想はやや冗長な気がしないでもないですが、最後は往人の想いが通じ、佳乃が母親を失った悲しみを克服する爽やかなENDでした。観鈴ルートの後にプレイしたこともあり、評価は高いです。

但し、佳乃ルートの往人は法術を失います。佳乃と人生を歩むなら構わないのでしょうが、SUMMER編とAIR編で明かされる設定を考慮すれば、『AIR』の世界観において最悪の展開です。観鈴以外のヒロインを選べば観鈴を救えない。これは美凪ルートも同様です。しかし佳乃ルートでは法術を失うため、往人の子孫は、観鈴と同じように苦しんで死んでいく女の子たちを永久に救えないのです。この事実に気付いたとき、佳乃ルート自体がバッドエンドだと確信しました。

DREAM編:美凪とみちるの別れに号泣

最後は遠野美凪のストーリーです。美凪は初登場時から謎のオーラを醸し出しており、私には合わないタイプだと察知しました。美凪のマイペースな話し方と、やんちゃなみちるの鬱陶しさに辟易し、美凪ルートは仕方なく攻略する感じでした。ところが話が進むにつれて少しずつ二人の秘密が明かされ、美凪の悲しい過去と偽りの現実に胸が苦しくなりました。美凪の母親が美凪を「みちる」と呼ぶ場面は衝撃的で、遂には娘の存在すら忘れてしまう展開は辛かったです。

現実に耐えられず駅で暮らすようになった美凪を家に帰すのは、往人(に感情移入しているプレイヤー)の役割です。ここからは選択肢によって2ルートに分岐し、美凪に色目を使う選択肢を選んだ場合はバッドエンドへ。美凪は家に帰る決心ができず、往人にすがるも突き放されて絶望することになります。それでも美凪は往人についていく道を選び、二人でバスに乗って旅に出て物語は終わります。初回は当然のように色目を使ったので、「なにこれ?」と困惑しました。

無難な選択肢を選んだ場合はトゥルーエンドへ。美凪は母親との絆を取り戻し、「みちる」から「美凪」に戻ることができます。しかし天国から来たもう一人の「みちる」も、いつまでも美凪と一緒にいるわけにはいきません。みちるを美凪に引き合わせてくれた、空にいる女の子に幸せな思い出を持っていくため、往人・美凪・みちるの最後の思い出作りが始まります。ここからの展開は優しく、暖かく、感動的で、感想を書いているだけでも泣いてしまいます。

この世に生まれてくることを許されなかったみちるが、本当のお母さんと最初で最後の対面を果たした後、とうとう美凪とみちるの別れが訪れます。みちるが涙を流しながらも笑顔で空に帰る場面は、印象的なCGも相まって画面が見えなくなるぐらい泣きました。全く期待していなかった美凪ルートにここまで泣かされるとは思わず、『AIR』の凄さを実感したストーリーでした。みちるの「シャボン玉」や「星の砂」も印象的です。美凪ルートの出来は飛び抜けています。

SUMMER編:神奈を待ち受ける残酷な運命

DREAM編を終えると千年前のSUMMER編へ。パッケージを見て過去編がありそうなことは薄々気付いており、ネタバレは勘弁してほしいと思いました。SUMMER編は開始早々に翼人の神奈備命が登場。巫女風のキャラデザと独特の口調、ツンデレっぷりに激しく萌えまくり、立ち絵だけで和みました。神奈を警護する柳也と女官の裏葉も、現代編とは一風変わったナイスなキャラです。ちなみにSUMMER編に選択肢はなく、ストーリーを読み進めるビジュアルノベルになります。

翼人について断片的な情報が明かされた後、三人の長く険しい逃避行が始まります。八百比丘尼奈(母上)に会いたい神奈と、神奈のためにはどんな困難や危険も厭わない柳也と裏葉が、旅の中で家族のような関係になっていくのは感動的です。幽閉同然の暮らしを送っていた神奈が、柳也と裏葉に出会えたのは本当に幸せなことだと思いました。しかしながら、現代編の観鈴の苦しみに繋がる以上、神奈の旅の結末はハッピーエンドではないと覚悟していました。

高野山に足を踏み入れた一行は、戦闘を切り抜けて八百比丘尼の幽閉場所に辿り着きます。神奈の喜びも束の間、母上は敵の矢を受け、神奈に翼人の使命を託して亡くなりました。敵の軍勢が迫る中、自分の運命を悟った神奈は柳也と裏葉を救うため空に昇って呪いを受け、悲しみの中に生き続けることになります。SUMMER編がここまで可哀想な展開になるとは予想できませんでした。神奈を待ち受けていた残酷すぎる運命に、私はただ泣くことしかできませんでした。

残された柳也と裏葉は、翼人の味方の智徳法師に匿われます。裏葉は方術の素質を見出されて修行し、翼人の呪いで死期が迫る柳也は『翼人伝』を編纂します。柳也と裏葉が神奈を救うのは不可能ですが、方術と翼人の素性を知る二人の子孫が、地上に降りた神奈の生まれ変わりを救うことはできます。神奈に深く関わったために命を落とす柳也がそのことを全く後悔せず、神奈に仕えた裏葉もまた、強い精神力で柳也を支えました。この二人の信念が『AIR』の物語に深みを与えています。

AIR編:本当の親子になった観鈴と晴子

AIR編はDREAM編の観鈴ルートの続きと思いきや、カラスの「そら」と観鈴が出会うところから始まります。そらの正体が往人であることはすぐに気付き、往人と観鈴の出会いを追体験するストーリーだと把握しました。カラスになった往人は物語を傍観するだけで、どう見ても観鈴と神奈は救えません。そもそもループ物は色々な作品で見てきたのでマンネリ感があり、DREAM編のだらしない晴子にも憤りを感じていたため、序盤の期待値はかなり低く、飛ばし気味で進めました。

その考えを改めるのは、晴子がそらを神社に連れていく場面です。かつて観鈴を押し付けられた晴子は、いつか本当の父親が観鈴を引き取りに来たときに辛い思いをしないよう、わざと母親らしく振る舞ってこなかったのです。観鈴の誕生日プレゼントとして恐竜のぬいぐるみを買ってきても、やっぱり母親になるのは無理だと諦め、そらの目の前でぬいぐるみを投げ捨ててしまいました。このぬいぐるみをそらが必死に運ぼうとしたことが、最後に奇跡を起こします。

DREAM編で晴子が観鈴を見捨てたように見える展開はミスリードでした。実際には観鈴の本当の母親になるべく、観鈴の実家に乗り込んで直談判するために出ていったのです。一方の観鈴は夢の影響で弱り続けており、誰かと心を通わせようとすると癇癪を起こしてしまいます。ここで満を持して発動されるのが、往人が裏葉から受け継いだ法術です。代償として往人は消滅してしまいますが、観鈴は少しだけ延命され、癇癪を起こす呪いが消え去ります。本作で起きる奇跡の一つです。

AIR編の後半は本作のテーマである「親子の愛」が丁寧に描かれます。ここから先は泣けない場面を探すほうが難しいです。往人に延命されて一人でも頑張っていこうと決意した観鈴は、家に帰ってきた晴子を呪いから守るため、涙ながらに晴子を拒もうとします。それでも本当の母親になると決めた晴子の優しさを受け入れ、ようやく二人の間に親子の絆が生まれるのでした。晴子が観鈴の髪を切ってあげるシーンは特に優れており、親子の温もりを感じてひたすら泣きました。

ところが親子の絆は容赦なく打ち砕かれます。観鈴は呪いによって記憶を失い、大好きな晴子のことを忘れてしまいます。観鈴の記憶は戻らないばかりか体の具合も悪くなり、幸せな日々が崩れ去っていきます。そんな状況で実の父親の橘敬介が現れ、観鈴の容態を見て憤り、晴子のもとから連れて行こうとする絶望的な展開が訪れます。私は観鈴と引き離されることに本気で恐怖を感じ、次を見るのが怖くてボタンを押す指が震える有様でした。精神的にかなりきつかったです。

観鈴が連れて行かれる日、私の心は恐怖と絶望で満たされていて、こんな辛い作品に手を出すべきではなかったと心底後悔していました。眠っている観鈴を海辺で引き渡したとき、自分の人生が終わったように感じました。ところが目を覚ました観鈴は父親を拒絶します。記憶を失くしたはずの観鈴が晴子を「ママ!」と呼んだとき、もはやゲームを続行できなくなるほど号泣してしまいました。海辺のシーンは本当に泣けます。こうして思い出すだけでボロボロ涙が溢れてきます。

AIR編はこれで終わりではありません。親子の絆を取り戻しても、観鈴の記憶は戻らず、その精神も幼くなったままです。晴子は観鈴を夏祭りに連れて行こうと奮起しますが、その願いも虚しく、当日は大雨になってしまいます。観鈴を連れて雨の神社を訪れ、打ちひしがれる晴子が拝殿で目にしたのは、かつて観鈴に渡せず捨ててしまった恐竜のぬいぐるみでした。晴子が観鈴と一緒にぬいぐるみを掴んだことで、二人は本当の親子になり、観鈴の記憶が戻るきっかけになった。私はそう解釈しています。

観鈴がゴールするシーンは泣きませんでした。あの夏、観鈴は往人と出会い、晴子と本当の親子になり、夢を見終わって神奈を悲しみから解き放ったはずです。翼人の呪いを背負わされた観鈴は、幼い頃から孤独に苛まれて想像を絶するような苦しみを経験したでしょう。いつも明るく振る舞っていたけれど、その笑顔の内側は悲しみに満ちていたでしょう。それでも最後は小さな幸せを掴み取り、「幸せな記憶」とともに天国に行きました。だから私は泣かなかったのです。

……などと強がってみたところで、観鈴はもうこの世にいないのです。クリア後は放心状態になって何もできず、その晩は観鈴と一緒に遊ぶ夢を見る有様でした。観鈴の死を実感したのは翌朝です。自分でも抑えられないほど号泣して寝込み、食事が喉を通らない日々が続き、1ヶ月ぐらい日常生活に支障をきたすほどでした。ここまで激しく心を揺さぶられ、胸が締め付けられた体験は『AIR』が初めてです。観鈴を失った精神的ショックは、そう簡単に癒えるものではありませんでした。

観鈴が亡くなった事実を受け入れるのは難しいです。この感想を書いているときも、「にはは」と笑っていた観鈴のことばかり考えています。観鈴と一緒に過ごした短い夏は一生忘れません。若くしてこの世を去った神尾観鈴という女の子は、私の人生観に多大な影響を及ぼす存在でした。だからこそ、いつまでも観鈴の死を引きずって塞ぎ込んだりせず、前を向いて生きていかなければならないのです。22年前に『AIR』をプレイしたエロゲーマーも、きっとそう感じたはずです。

外伝小説:SUMMER編の前日譚

Switch版には外伝小説「初空の章」が収録されています。SUMMER編の前日譚であり、やはり選択肢のないビジュアルノベルです。社で幽閉同然の暮らしを送る神奈と、そこに着任した裏葉の交流が本章の主題。最初は誰にも心を開かなかった神奈が、面白半分で世話をする裏葉と通じ合う模様が描かれます。SUMMER編で一風変わったオーラを醸し出していた裏葉は、やっぱり変わり者でした。裏葉との出会いが神奈を変え、後の逃避行に繋がるのです。

クリア後の感想と評価

ファンの考察と創作を読み漁る

『AIR』は難解な作品です。エヴァのように敢えて全てを説明せず、プレイヤーに想像の余地を残したからこそ、20年以上経った今でも語り継がれる名作になったのだと思います。クリア後は2000年代に隆盛した匿名掲示板の過去ログや、現存する鍵っ子(Keyファンのこと)のサイトを探し、翼人の呪いや往人の能力に関する様々な考察を興味深く拝見させていただきました。ラストシーンに登場する少年少女の意味も、自分なりに考えて希望を見出しています。

『AIR』の「エヴァっぽさ」は当時から指摘されていました。ストーリーが似通っているわけではないのですが、確かにエヴァに代表される「セカイ系」の空気をひしひしと感じます。『AIR』の脚本家の麻枝准氏はエヴァの影響を受けているらしく、エヴァが大流行した2000年前後ならありそうなことだと思いました。私はエヴァに苦手意識を持っていたのが、2011年にようやく全話を観て一人で熱狂した事情があります。エヴァと『AIR』にリアルタイムでハマった人達が羨ましいです。

意外だったのは、発売当初は絶賛ではなく賛否両論だったらしいことです。前作『Kanon』のようなハッピーエンドを期待していて鬱になった人が少なからずいたそうで、ファンサイトの掲示板で激論が繰り広げられたと書かれていました。老舗レビューサイトでは圧倒的な高評価ながら、長すぎて退屈とか、キャラが電波過ぎて耐えられないといった意見もありました。合わない人はとことん合わないのがKeyの特徴らしく、決して万人受けする作品ではないと理解しました。

Keyの作品が流行った2000年代初頭は個人サイトの全盛期でした。熱心なファンはジャンルを問わず自分のホームページを開設し、長文の感想や考察のほか、イラストやSSなどの二次創作を自由気ままに公開していました。残念ながら情報発信の場は20年間でホームページからブログへ、ブログからイラスト投稿サイトやSNSへと移行。かつて隆盛した古参の個人サイトは更新が止まり、閉鎖され、そこに掲載されていたであろう感想や創作は『翼人伝』のように失われてしまいました。

『AIR』をプレイした人が勢いに任せて書いた感想には価値があります。観鈴が大好きな人が描いた二次創作も、愛に満ちていて見応えがあります。20年前の感想や創作は、今となっては恥ずかしくて「厨二病」とか「黒歴史」と自嘲されるかもしれません。しかし2022年にハマった私からすれば、どれも新鮮で輝いて見えますし、当時の熱気を感じられる貴重な文化財なのです。萌えたぎる鍵っ子だった皆さんへ。どうかサイトを閉鎖せず、未来の鍵っ子のために残しておいてください。

海辺の町を訪れる主人公に共感

『AIR』の没入感を高めるのは主人公の設定とロケーションです。主人公の国崎往人は若い旅人で、真夏に海辺の田舎町を訪れるところから物語が始まります。私自身が若い頃から自転車と徒歩の野宿旅に明け暮れ、今でも『AIR』のような海辺の町を訪れるので、共感できる部分が沢山ありました。一人旅を続けるおかげで浮世離れした性格になるのも一緒です。人形劇でお金を稼ぐセンスが皆無なせいで、野宿旅の装備としては心配になるほど貧相。これで4シーズン野宿するのは厳しいでしょうね。

上述したように、美麗な背景CGで田舎町の空気感がうまく表現されているのもグッド。優れたBGMや蝉の鳴き声と相まって、観鈴達と一緒に過ごす楽しい日々をリアルに感じられます。美凪ルートの舞台となる廃駅の雰囲気も良く、美凪と一緒に暮らしたいと思いました。但し、用意された背景だけでストーリーが進行するため、ロケーションの少なさを感じたのも事実です。おそらく私がオープンワールドのゲームに慣れているのが原因であり、ギャルゲーとしては真っ当なボリュームなはずです。

物語を引き立てるBGMと挿入歌

BGMはロケーションや雰囲気にマッチする良曲揃い。『AIR』の物語を盛り上げてくれます。観鈴のテーマ曲の『夏影』は夏らしさと懐かしさが詰まった名曲。この曲を聴きながら観鈴と旅に出たくなります。佳乃のテーマ曲の『水たまり』は明るく楽しい雰囲気、美凪のテーマ曲の『』はロマンチックな雰囲気と、キャラのイメージに面白いほどマッチしています。シリアス展開で流れるBGMも印象的なものばかり。観鈴が苦しむ場面で流れる『此処』は、辛いからもう聴きたくないです。

主題歌の『鳥の詩』は説明不要の名曲。歌詞・メロディー・歌声の三要素で『AIR』を完璧に表現しています。『AIR』について何も知らなかった私が、『鳥の詩』を聴いただけで『AIR』を衝動買いしてしまう。それぐらい優れた楽曲です。挿入歌の『青空』も、穏やかな曲調ながら激しく感情を揺さぶる名曲でした。聴けば必ず観鈴を想って号泣してしまうので、なるべく聴かないようにしています。エンディングの『Farewell Song』は、『鳥の詩』『青空』に比べるとインパクトに欠けました。

風変わりで個性的なヒロイン達

『AIR』に登場するヒロイン達は一風変わっています。キャラデザはギャルゲーとしては特別おかしくありませんが、性格や言動がとにかく奇抜で、最初は「なんだこの変な奴は」と思ってしまいました。観鈴の口癖である「にはは」や「がお…」をはじめ、挙げるときりがないほど変な台詞が繰り出されます。電波系と言っても差し支えなく、このノリが合わない人は絶対に楽しめないと断言できます。私も美凪ルートの序盤はキラキラした電波でやられそうでした。

そんなヒロインの奇抜さを魅力に昇華させて、プレイヤーに「この女の子を助けたい!」と思わせてしまうのが『AIR』の凄いところ。独特の絵柄と声優さんの演技が絶妙にマッチして、ストーリーを進めるうちにヒロインを可愛いと感じるようになります。個性的なキャラ付けによって中盤までの日常パートを楽しく(あるいは困惑しながら)進められるからこそ、終盤のシリアス展開がより一層重く感じられるのです。この効果を美凪ルートで実感し、Keyのキャラ作りの上手さに脱帽しました。

元々エロゲーだったためか、ヒロインの年齢は明言されません。観鈴と美凪が進学について触れないこと、佳乃が二人より一学年下であることを踏まえ、観鈴と美凪が高2、佳乃が高1とするのが定説のようです。天真爛漫な観鈴はとても17歳には見えませんが、彼女は翼人の生まれ変わりであり、それ故に長くは生きられない(おそらく生まれつき心身に何らかの障害を抱えている)という深刻な事情があります。私は観鈴のことを幼稚だとは思いませんし、ありのままの観鈴を愛しています。

SUMMER編の神奈も風変わりな女の子です。世間知らずで子供っぽいツンデレキャラかと思いきや、その根幹には優しさと強さを秘めていました。神奈と観鈴の外見上の共通点は瞳の色ぐらいですが、優しい性格と強い精神力はまさに生まれ変わりです。翼人の記憶が潜在意識になり、観鈴が空や恐竜に魅力を感じること。神奈が愛する人々を傷つけないよう自分にかけた呪いのせいで、観鈴が限りない孤独に苛まれること。作中では明言されない裏設定を含めて、秀逸なキャラ造形だと思います。

AIRの一翼を担う「いたる絵」

樋上いたる先生が原画を手掛けた絵も『AIR』の醍醐味です。目が離れていて口の位置が高い独特の絵柄は当時から「いたる絵」と呼ばれるほど有名だったそうで、確かに現在の萌え系イラストとはかけ離れています。最初こそ面食らったものの、プレイしているうちに可愛いと感じるようになり、自然と受け入れられました。私が一番好きなCGは「晴子に髪を切ってもらう観鈴」です。中にはデッサンがおかしいCGも混じっていますが、グラフィッカーの塗りで補っているので辛うじて耐えられます。

いたる絵はKey作品の象徴です。いたる絵あってこその『AIR』であり、突き詰めると「いたる絵じゃない観鈴は萌えない」みたいな認識になります。いたる絵を異常に愛好する症状のことを「いたるリアリティ」と呼んだそうで、当時の鍵っ子は大抵いたるリアリティに罹患していたそうです。かくいう私もいたる絵に魅入られ、クリア後は後述する原画集を買ったり、いたる絵を再現した二次創作イラストを描くまでになりました。これがいたる絵の力です。

但し、いたる先生の絵柄は現在に至るまで変わり続けています。1999年の『Kanon』、2000年の『AIR』、2004年の『CLANNAD』では顔の描き方が大きく異なり、いたる絵の特徴は『CLANNAD』で随分薄れているのが分かります。Switch版のパッケ絵は2005年の『AIR Standard Edition』と同じ。当時の先生はスランプだったのか、作中の観鈴とはまるで別人に見えます。個人的には2002年のPS2版のパッケ絵を採用してほしかったです。

大ボリュームの三部構成

『AIR』はDREAM編(観鈴・佳乃・美凪)、SUMMER編、AIR編の三部から構成される長編ストーリーです。DREAM編の観鈴ルートを終えただけでは次章に進みません。佳乃・美凪ルートもクリアすることでSUMMER編が現れ、最後のAIR編へと続くシステムです。私はSwitch Liteでオンライン登録を行っていないので、オールクリアまでの正確なプレイ時間は不明です。各ルートの選択肢を片っ端から試したり、Switch版収録の外伝小説まで読んで50時間ぐらいかかったと思います。

三部構成で徐々に物語の核心が明らかになっていくシステムもさることながら、各章をクリアした際にタイトル画面の背景が変わる演出が秀逸です。SUMMER編で神奈の運命に涙した後、ゲーム開始メニューが「START "AIR"」になるのも印象的。今までは序章に過ぎず、これから『AIR』の本編が始まるという高揚感がありました。AIR編を終えて放心状態でタイトル画面に戻った時、背景に描かれた女の子を見て「これが"AIR"だったのか…」と震える体験は、一度しかできません。

恋愛ADVかギャルゲーか

公式サイトによると『AIR』のジャンルは「恋愛アドベンチャー」。世間一般では「ギャルゲー」や「美少女ゲーム」と扱われます。二次元の女の子と交流するゲームシステムは間違いなくギャルゲーですが、プレイすれば分かるように本作の恋愛・性的要素は非常に希薄です。観鈴は往人と友達になりたい、一緒にいてほしいと願い、プレイヤーは観鈴を孤独や苦しみから救いたい、という保護者のような感情を抱きます。それは恋愛感情ではなく、人と人の絆です。

泣けるギャルゲーということで「泣きゲー」とも称されますが、本当に『AIR』で号泣した後では陳腐すぎると感じます。観鈴が亡くなった結末から「鬱ゲー」扱いするのも、幸せな記憶とともに天国に行った観鈴に失礼でしょう。私は便宜上「ギャルゲー」の呼称を使っているものの、『AIR』の内容は明らかにギャルゲーの域を超えています。本作を知らない人に勧めるなら、「ビジュアルノベル」が最も無難な表現ではないでしょうか。

AIRと観鈴の誤記について

掲示板や個人サイトで『AIR』の感想を読んでいて目に付いたのが誤記の多さです。『AIR』の正式タイトルは大文字なのに、「Air」と表記するケースが見受けられます。観鈴ちんの名前を「美鈴」とする不届き者も跡を絶ちません。『Air』は 『G線上のアリア』をバックに弐号機が戦う映画です。「美鈴」は門番の「めーりん」です。なぜ作品名と名前を誤記するのか私には理解できません。ファンサイトでこの誤りがあったら鍵っ子失格です。絶対に間違えないようお願いします。

考察未満の雑感など

一条天皇が治めた正暦年間

SUMMER編の時代設定は正暦5年(994年)。平安時代中期の王朝国家体制に起きた出来事です。正暦年間(990~995年)の天皇は一条天皇、関白は藤原道隆。作中でも述べられているように翼人の抹殺を目論んだのは一条天皇と藤原氏であり、この設定は史実を反映しています。逆に翼人を崇めたのは藤原氏の陰謀で出家させられた花山法皇の一派であり、物好きな花山院なら有り得そうなことです。更に付け加えると、正暦5年には本当に高野山が炎上しています。この一致は面白いです。

正暦年間は大江山の鬼退治伝説でも有名です。南北朝時代の成立とされる『大江山絵詞』は、大江山を本拠地とする鬼王の酒天童子が、正暦年間に一条天皇の勅命を受けた源頼光たちに滅ぼされる物語です。江戸時代に普及した『御伽草子』でも一条天皇の時代と設定されており、ある派生作品では正暦元年(990年)とされます。『AIR』で翼人が滅ぼされた時代は、鬼が滅ぼされた時代に重なるのです。創作世界の正暦年間は、力を持つ種族が朝廷に抹殺されていった時代でした。

神を一つにまとめる思想

一条天皇が「神を一つにまとめる」という名目のもとに実行した翼人の抹殺。それは実際の古代史と重なります。できるだけ簡潔に説明すると…弥生時代から古墳時代にかけて発展した各地の勢力は、それを上回る武力を持つヤマト王権に組み込まれていきました。中には服従を良しとせず抵抗の道を選んだ勢力も存在し、そういった人々は『古事記』と『風土記』逸文では「土蜘蛛」と呼ばれました。上述した鬼のモデルの一つでもあり、「まつろわぬ民」という表現もよく知られています。

『古事記』と『日本書紀』は日本古来の素朴な神話と思われがちですが、実際には壬申の乱で政権を掌握した天武天皇の意向で編纂された政治的な歴史書です。そこに記された神話は、各地の神話や伝説を朝廷で一つにまとめて作り直した物語なのです。例えば古代出雲には独自の武力や神話を誇る強大な勢力がありましたが、ヤマト王権に服属した結果、出雲神話に登場する神々は『古事記』へと吸収されてしまいました。古代日本では、こうして神々をまとめることで朝廷の支配を明確化しました。

九州南部の隼人と熊襲、東北の蝦夷と呼ばれた勇猛な人々もまた、激しい抵抗の後に朝廷に服属しました。隼人の一部は早い段階で朝廷に従い、兵士となって宮殿を守護した記録が残ります。『AIR』に登場する翼人も彼らと同じく権力者(大王や天皇のこと)に服属し、神に等しい力を持っていたが故に武器として利用され、おそらく土蜘蛛や蝦夷の追討に協力したのでしょう。そして、最終的にはその力を畏れた権力者によって、「神を一つにまとめる」という名目で歴史から抹消されました。

失われた柳也の『翼人伝』

本作最大の拍子抜け要素。それは柳也が編纂した『翼人伝』の扱いです。AIR編では『翼人伝』がキーアイテムになり、何らかの形で神奈と観鈴を救うのだと期待していたら、一切触れられないまま終わってしまいました。往人が裏葉から受け継いだ能力で観鈴を延命し、観鈴が強い精神力で夢を見終わる展開は確かに感動的ですが、かなり重要そうだった『翼人伝』が「マクガフィン」ですらなかったのは意外でした。これを消化不良だとして不満点に挙げる感想も散見されます。

しかしよく考えてみると、10世紀末の書物が20世紀末まで残るほうが珍しいと言えます。SUMMER編以降しばらく、柳也と裏葉の子孫は翼人関係者を抹殺したい朝廷から隠れて暮らしたと思われます。やがて神奈の生まれ変わりを探して救うため、裏葉の人形と柳也の『翼人伝』を携えて旅を始めたでしょうが、平安末期から始まる戦乱の世において、幾度も命の危険(方術使いの血筋の断絶)に晒されたはずです。柳也が命がけで編纂した『翼人伝』は、戦乱の中で失われてしまったと考えます。

書物が失われると、神奈を救う使命の継承方法は「口伝」のみになります。まさにDREAM編の冒頭のように、親から子へと語り伝え、方術と古びた人形とともに後世に受け継がれてきたのです。こういった伝授によって極秘の祈祷や修行を受け継いだ信仰は実在しますが、何世紀も経ると風化や変容が生じます。過去編の「方術」が現代編で「法術」の表記に変わっているのは、その変容をうまく仄めかしており、柳也と裏葉が生きた時代とは大きな隔たりがあることを感じさせます。

口伝には秘密を守る役割があると同時に、廃絶しやすい脆弱性を抱えます。例えば口伝を重視した独特の山岳宗教である修験道は、明治維新に際して邪教と見なされて廃絶を余儀なくされました。柳也と裏葉の子孫は権力者の目につかないよう旅を続けたと思われますが、それでも法術使いは危険視されやすい存在です。要するに、「空にいる女の子」が往人の時代まで千年も語り継がれたこと自体が奇跡なのであって、その事実の前には『翼人伝』の喪失など些細な事にすぎないのです。

十字架と自己犠牲の精神

私が強く感銘を受けた点は、『AIR』の登場人物が自己犠牲の精神を持ち合わせていることです。大切な人のために自分の人生や命すら投げ出す…神奈が柳也と裏葉を救うため空に昇ったこと。往人が消滅して観鈴を延命したこと。観鈴が夢を見終わって神奈を救ったこと。それは究極の愛の実践に他なりません。観鈴の制服の十字架は単なるアクセサリーではなく、聖書の一節にある「友のために自分の命を捨てること、これ以上に大きな愛はない」を意味していると考えます。

「十字架は原罪を表している」という考察も見かけました。観鈴を苦しめる翼人の呪いの一つは、翼人が権力者の武器として多くの人々を殺した罪によるものです。美凪が妹を欲しがったせいで母親が病んでしまったという思い込みや、佳乃の母親が佳乃を産んだせいで亡くなってしまったという思い込みも、それぞれのヒロインに罪の意識として重くのしかかります。明言されない十字架の意味を巡って、ファンがキリスト教を交えて色々考察する辺りもエヴァっぽいです。

ゲームとしての評価

選択肢で攻略する面白さ

『AIR』はヒロインと対話しながら選択肢を選んで攻略するギャルゲーです。私にとってはストーリーだけでなくギャルゲーのシステム自体が斬新で、好感度が高まりそうな選択肢を即決したり、今後に影響しそうな選択肢を熟考する面白さもありました。ゲーム性よりもストーリーを重視したためか選択肢は少なく、難易度は低め。DREAM編の観鈴ルートで最後の最後に選択を誤り、往人がバスで町を出ていく救いのないバッドエンドになった以外は失敗しませんでした。

上述したように、美凪ルートは選択肢によってバッドエンドとトゥルーエンドに分かれます。美凪に色目を使ってしまうとバッド、無難な選択ならトゥルーになるのが面白いです。観鈴ルートでは、そっけない選択肢ばかり選ぶと往人が早々に町を出ることになり、名残惜しそうな観鈴と「よーい、どん!」で別れる印象的なバッドエンドに至ります。このEND専用のCG(PS2版のパッケ絵と同じ)もあり、よく作り込まれていると思いました。

バッドエンドには本当に悪い終わり方もあります。佳乃ルートを進めると、佳乃のバンダナを無理やり外す、という最悪の選択肢が現れます。クリア後に興味本位で選んでみたら、佳乃の心を傷つけ、嫌われ、町を出ていかざるを得なくなり、即バッドエンドでした。自分が佳乃に嫌われたことよりも、馬鹿げた行動で佳乃の心を傷つけてしまったことを後悔し、ゲームとはいえ激しい自己嫌悪に陥りました。明らかに好感度を下げる選択肢は選ばないほうがいいです。

ゲーム中の全ての選択肢がルートの攻略に影響を与えるわけではなく、起きるイベントが異なるだけの場合もあります。もちろんその選択でしか見られない展開があるので、各ルートをクリアした後は全テキストの読破を目指したいものです。『AIR』は大ボリュームの長編で、Switch版はフルボイスです。1回クリアするだけでは勿体ないですから、選択肢を片っ端から選び、『AIR』の世界観を味わい尽くすべきでしょう。でも佳乃ルートのバッドはオススメできないです。

初心者にも易しいシステム

Switch版の操作は基本的に十字キーとAボタンで済みますが、Lボタンの巻き戻しで前の選択肢に戻ったり、Rボタンの早送りで既読のシーンを飛ばせる便利な機能を備えます。例えば観鈴ルートクリア後に佳乃ルートをプレイする場合、序盤の共通ルートを早送りで飛ばせます。美凪ルートの入り方は分かりにくかったので、早送りと巻き戻しを駆使し、色々な選択肢を試して入りました。攻略サイトを見なくても余裕でクリアできたので、ゲームシステム・難易度ともに初心者向けと言えます。

総合評価はもちろん100点

Switch版の『AIR』をゲームとして評価すれば100点満点中100点。本作のためだけにSwitch Liteを買ってもいいぐらいです。私がどれほど『AIR』に感銘を受けたのかは、このページを最後まで読めばお分かりいただけると思います。『AIR』との出会いは奇跡です。これまで体験してきた全てのゲームを余裕で超えていく、大きな力を持った作品でした。AIR編を終えて号泣した後は、迷うことなくTVアニメ版のBlu-rayを注文していました。

TVアニメ版(2022年8月に視聴)

AIR Blu-ray BOX Newパッケージ版 AIR Blu-ray BOX Newパッケージ版

2005年に放送されたアニメ

AIR』の原作発売から5年後の2005年、京都アニメーション制作のTVアニメ版がBS-iで放送されました。京アニが全話の制作を請け負ったアニメはこれが初めて。決して無名というわけではなく、2003年の『フルメタル・パニック? ふもっふ』でマニアの注目を集めていたようで、某掲示板の過去ログを読むと当時の鍵っ子の期待度の高さが伺えます。後述するようにTVアニメ版は驚異的な出来栄えであり、本作の成功によって、京アニは誰もが知るアニメ制作会社に発展していくのでした。

当時の私はKey作品に全く興味を持っていなかったので、リアルタイムでは視聴しませんでした。同年に尾道が舞台のアニメ『かみちゅ!』を観て舞台探訪の道を志した際、探訪業界で『AIR』のクオリティが話題になっていたのはよく覚えています。しかしエロゲー原作のアニメなんかがそこまで凄いものとは思わず、京アニにとって重要な作品だったことも知りませんでした。恥ずかしながら、京アニという会社を初めて意識したのは2006年の『涼宮ハルヒの憂鬱』です。

さて、2022年にTVアニメ版を観る手段はDVDではなく、ネット配信またはBlu-rayです。気軽に視聴できるという意味ではネット配信が優れていますが、Switch版の『AIR』に衝撃を受けたばかりの私は、これから何度も鑑賞できるBlu-rayを選びました。2008年発売の『AIR Blu-ray BOX Newパッケージ版』が届くと、パッケ絵の底抜けに明るい観鈴を見て胸が苦しくなりました。Keyのストーリーと京アニのクオリティが融合した力を、これから実感することになります。

……ところで、TVアニメ版と同時期に東映アニメーション制作の劇場版も公開されています。原作を改変しすぎて鍵っ子からは酷評されており、怖いもの見たさで鑑賞すると本当に残念な出来でした。大人びた感じの観鈴が可愛かったり、海辺の町や小物の描写など随所に光る部分もありますが、それ以外は一切評価できません。東映版から『AIR』に入門しないでください。あんなお粗末な内容で『AIR』の空気を感じることはできません。本ページでは、高品質な京アニ版の感想のみ記述します。

TVアニメ版の評価も100点

結論から言うと、京アニ制作のTVアニメ版の評価は100点満点中100点でした。いたる絵に忠実なキャラデザ、高品質な作画、感情のこもった演技、原作を超える演出、美しい背景美術によって『AIR』の世界観を完全再現しており、まさに「アニメ版AIR」です。ゲームを続行できなくなるほど泣いたAIR編は、アニメ版では号泣という表現が生易しいぐらい泣きました。実生活でもここまで泣いたことがなく、観鈴の力強い生き様をアニメで描いてくれたことに感謝したくなりました。

長編作品を1クールに圧縮したせいで物足りなさを感じる、古いアニメなのジャギーが目立つ、といった欠点もありますが、京アニの情熱的なこだわりの強さと技術力の高さは飛び抜けており、欠点を打ち消して満点にできるほど素晴らしいアニメ作品でした。2022年夏にSwitch版とTVアニメ版で体験した『AIR』の物語は、今まで観てきた映画やアニメを完全に超越していました。その余波は本ページの最後に記述するとして、まずはTVアニメ版で感銘を受けた要素を書き綴ります。

驚異的なアニメーション技術

OPだけで分かる京アニの実力

『AIR』のタイトルロゴがアニメーションで表現され、開始早々「凄い…!」と唸りました。原作をクリアしなければ分からない、AIRロゴの女の子の重要性を完璧に理解して制作されているのです。『鳥の詩』が短く編集されて意味不明の歌詞になっているのは残念ですが、OPの時点で京アニスタッフが原作を心から愛していると分かりました。まだ本編が始まってもいないのに、「髪を切った観鈴」や「波打ち際の恐竜のぬいぐるみ」が登場するだけで泣いてしまいました。

忠実に再現された「いたる絵」

原作のヒロイン達の可愛らしさは、樋上いたる先生の絵に依るところが大きいです。TVアニメ版のキャラデザは独特の「いたる絵」を忠実に再現しており、「いたるリアリティ」に罹患した鍵っ子を興奮させました。目が離れて口が高い顔を違和感なく表情豊かに動かす技術は革命的。「スペースシャトルのエンジンで紙飛行機を飛ばしてるような感じ」…放送当時の某掲示板に書き込まれた、京アニの神作画に感嘆する声です。あの顔を動かすのは本当に凄いですよ。これだけで満点評価です。

今では独特のキャラデザを古臭いと感じたり、作画崩壊などと揶揄する感想も見受けられます。確かに変わった絵柄だとは思いますが、いたる絵あってこその『AIR』であり、あの顔でなければ『AIR』の魅力が損なわれてしまいます。ストーリーそっちのけで、最新のアニメ絵を基準に2005年の『AIR』を低評価するのはあまりにも愚かです。今風の絵柄でリメイクしてほしい、という意見にも全く賛同できません。もしいたる絵が合わないなら、そういうものだと諦めてください。

原作のカットや演出を再現

原作クリア直後に視聴したこともあり、いたる絵以外の再現度の高さにも驚かされました。劇中のBGMは当然ながら原曲を使用。背景CGや名シーンがアングルを含めて再現されており、とにかく「アニメ版AIR」を実現したいという京アニスタッフの意気込みを感じました。妙なアレンジで『AIR』のイメージを壊さないよう、細心の注意を払って制作されているのが分かります。各章をクリアした後にタイトル画面が切り替わる演出はEDにて再現。本当によく出来ています。

原作でテキストのみだったシーンは、『AIR』の世界観に合った形で上手く描写されています。非常にシリアスな作品なので過度にコミカルな表現は使わず、でも日常パートのギャグシーンは面白く描く、という難題を見事にクリアしています。1クールに圧縮した事情もあり、原作要素がこれでもかというほど濃密に詰め込まれました。往人の妄想の「国崎最高!」が劇画でドラマチック(?)に描かれているのは最高です。こういう遊び心は嬉しいですね。

神奈の物語が終わった後、観鈴がカラスの「そら」と出会うシーンはアニメ版独自の演出でした。原作では往人と別れるバッドエンドで用いられた「よーい、どん!」の台詞とともに『AIR』のロゴが表示される…これはSUMMER編を終えた後に現れる「START "AIR"」を示します。この台詞と表示は原作でも特に印象的だったので、京アニの巧みな演出に感激しました。TVアニメ版のロゴに追加された鳥のシルエットは「そら」を表しているのでしょう。

空気感まで伝わる背景美術

特筆すべきは背景美術。海辺の田舎町の風景がリアルに描写され、暑苦しい空気感まで伝わります。実際に日本海側の香美町、太平洋側の美浜町でロケハンが行われており、全景から細部に至るまで雰囲気は抜群です。『AIR』は夏休み全開の明るく爽やかな作品ではなく、影のある重くシリアスな作品です。TVアニメ版の風景描写は、青い空と海が広がる田舎町を美しく描くことで、その明るさの対極にある観鈴の「夏影」を感じさせてくれました。『AIR』の重い空気が完璧に表現されています。

TVアニメ版の『AIR』は2000年代から流行したアニメの舞台探訪(いわゆる聖地巡礼)の代表作でもあります。上述したように、2005年に放送された尾道が舞台のアニメ『かみちゅ!』を観た際、探訪業界では『AIR』が話題になっていました。緻密なロケハンに基づいてリアルな風景描写を行う手法はその後も多用され、『涼宮ハルヒの憂鬱』『らき☆すた』『けいおん!』の3作は特に有名です。その原点が『AIR』だったのだと、今更ながら実感した次第です。

激しく心を揺さぶる人物描写

当たり前の話ではありますが、アニメ版の強みは「アニメーション」で表現できることです。風になびく観鈴の長い髪、女の子らしい仕草など、難しい動きのある描写で京アニの本領が発揮されます。1話の観鈴の登場シーンは、観鈴の美しさと儚さを恐ろしいほどハイレベルな作画で表現。観鈴が往人に「遊びたいな」と言う前に顔が引きつるのは、観鈴が勇気を振り絞って喋っていることを示します。外見だけでなく内面的な人物描写までやってのけるのが凄いところです。

夕日に染まる海辺で、観鈴が往人に空への純粋な憧れを語るシーンは圧巻。夕焼けの色合い、飛行機雲、風になびく髪、優しく儚げな表情、空を見上げるアングル…空にもう一人の自分の存在を感じる観鈴の台詞もさることながら、「星の瞬きのように短く、永遠のように長い夏」を過ごす往人のモノローグがマッチして、原作を超える名シーンになりました。1話目から心を揺さぶるTVアニメ版『AIR』。やがて迎える物語の結末を知っていると、自然に涙が溢れてきます。

TVアニメ版はDREAM編の3ルートを一本化しているため、往人が佳乃を救うルートに観鈴が同行します。往人が佳乃の目を覚まそうとして平手打ちすると、観鈴が「乱暴しちゃダメ!」と言って制止するのはアニメ版独自の展開。観鈴の優しい性格を強調する良改変です。佳乃がベッドの中でバンダナの秘密を聞いて涙を流したり、美凪ルートで楽しそうにやっている往人を見た観鈴が寂しそうに立ち去る印象的な場面も原作にはありませんでした。心情描写が特に優れています。

声優さんが映像を見ながら演技できるのも強み。上述した観鈴のシーンだけでなく、美凪が「飛べない翼に、意味はあるんでしょうか?」と言って号泣するところは、原作よりも悲痛な感情がこめられていました。私はアニメ制作の事情には疎いのですが、アフレコ時に映像が完成しているのは珍しいそうです。クオリティだけでなくスケジュールも厳守する京アニだからこそ、全要素が満点の作品に仕上がったということでしょうか。とにかく、演出面では原作を超越しています。

京アニは手加減してくれません。観鈴が往人とトランプで遊ぼうとして癇癪を起こしたり、誰もいなくなった部屋で無気力に暴れて泣きじゃくるシーンは、生々しすぎて観鈴が大好きな私には直視できませんでした。車椅子から落ちて「がお…」と呟くところなんて、ここまで辛い描写にしなくてもいいのにと思ったぐらいです。実は10話が終わって11話の車椅子のシーンが予告で流れた時点で、精神的にきつくなって一旦視聴を中止しています。むごすぎて耐えられませんでした。

観鈴が敬介を拒絶し、晴子を「ママ!」と呼ぶシーンは作画も演出も最高でした。原作では一番泣いて、今でも思い出すだけで涙が止まらなくなります。それがアニメで表現されるのだから泣けないわけがなく、私も「観鈴!」と呼びながら号泣し、心の中で観鈴を抱きしめました。ラストの観鈴のゴールに悲壮感はなく、原作同様の暖かい雰囲気で救われました。観鈴が幸せな記憶とともに天国へ旅立った事実を、心をこめて描ききってくれました。

AIRの世界観に合うキャラデザ

TVアニメ版では、原作で立ち絵が用意されなかったキャラのデザインが新しく用意されました。どれも「いたる絵」を踏襲しており、『AIR』の世界観にマッチしています。私が特に好きなキャラデザは往人の母親です。原作では着物姿だったと示唆されており、アニメ版では着物にコートとブーツを合わせてスーツケースとギターケースを携行する、流浪の人形使いに相応しい出で立ちです。裏葉をベースに柳也の触角と神奈の髪飾りも備え、過去編からの繋がりを感じさせてくれます。

往人だけでなく、美凪の母親が登場するのも嬉しいです。『AIR』では、母親の存在が重要な意味を持ちます。こうして優しい母親の姿を具体的に描いてくれたおかげで、本作のテーマである親子の絆がより強く感じられます。幼い往人に希望を託して消滅するシーンや、家に帰ってきた美凪との抱擁、生まれてくることを許されなかったみちるとの対面など、優しさに満ちる絵が心に響きました。キャラデザもさることながら、それを活かす演出が素晴らしいです。

『AIR』の物語のキーアイテムである人形も、TVアニメ版で初めてデザインが用意されました。原作プレイ中はデッサン人形みたいな無機質なものを想像していただけに、羽がついた可愛らしいデザインで驚きました。これも往人の商売道具として馴染んでいて、京アニスタッフのデザインセンスに感服するばかりです。人形に羽をつけたのは翼人のイメージでしょうが、『Kanon』に登場する羽つきリュックや天使の人形も参考にしたのでは?と後になって思いました。

もう一つ挙げておきたいのが、中学生時代の聖です。これも原作ではテキストのみだったのが、アニメ版ではショートカットのセーラー服姿で描かれました。ちゃんと中学生の聖に見えるのは当然として、母親を亡くした悲しみを決して表に出さず、可愛い佳乃の保護者であろうとするクールな雰囲気に泣けます。また、この制服から妄想を広げると観鈴、美凪、佳乃もセーラー服で中学校に通っていた時期があったはずです。そんな絵も見たかったです。

雰囲気抜群のSUMMER編

SUMMER編の描写も最高でした。原作では背景CGとテキストだけで進む三人の旅路が、現代編と同じく暑苦しい空気感を伴って情緒豊かに描かれます。平安時代の物語なので厳密な時代考証に基づくかと思いきや、そういった点は深く追求せず「それっぽく」見せることに成功しています。神奈の可愛らしさ、柳也のかっこよさ、裏葉の奥ゆかしさと、それぞれの魅力を存分に引き出しており、現代編では見られないコミカルな表現を楽しませてもらいました。動く神奈を見られるだけで満足です。

神奈がお手玉を練習したり、半脱ぎで柳也を誘惑するシーンを面白く再現しているほか、緊迫感に溢れる柳也と僧兵の戦闘シーンや、柳也に死なないでほしいと懇願する神奈の心情など、シリアスな描写もしっかり盛り込まれています。神奈が母上と死に別れ、柳也と裏葉を救うため空に昇って封印される展開は、分かっていたとはいえ悲惨すぎて涙が溢れました。残された柳也と裏葉の後日譚は感動的です。神奈を思いっきりコミカルに動かすことで、終盤のシリアスさを際立たせています。

実写映像を意識した演出

TVアニメ版には実写映像を意識した演出が取り入れられています。登場人物がローアングルで走り抜けると地面上のカメラが揺れたり、飛び散った泥がレンズに付着する表現に気付きました。京アニスタッフはロケハンに基づいて現実的な画作りを行っただけでなく、映像表現にも映画の要素を取り入れたのです。これはやりすぎ(褒め言葉)です。制作現場では「カメラ」ではなく「キャメラ」と呼んだことでしょう。狂ったようなこだわりを見せる京アニの姿勢に感服します。

しっかり作り込まれた小物

小物の描写も素晴らしいです。観鈴の大好物ながら原作では描かれなかった「どろり濃厚 ピーチ味」をはじめ、トランプや風鈴といった恐竜グッズがTVアニメ用にデザインされています。上述の背景美術やキャラデザと併せて、部屋の内装やそこに置かれた小物もしっかり作り込まれており、説得力を高めています。私は創作においてディテールを重視するタイプなので、小物に凝っているだけで満足できます。扇風機や星の砂に3DCGが使用されているのも意欲的だと感じました。

1クールに圧縮された長編

TVアニメ版は1クール(12話)で制作されました。原作は三部構成の長編作品であり、冗長とも取れる日常パートの全てに意味があります。1クールに圧縮するとなれば、原作の重要部分のみ詰め込んで、それ以外は大幅にカットせざるを得ません。『AIR』の中心人物である観鈴の物語はもちろん、佳乃・美凪ルートの見どころもしっかり抑えていましたが、日常パートが削ぎ落とされたことによる駆け足感は否めませんでした。逆の言い方をすると、よく1クールにまとめたものだと感心しますが。

特にSUMMER編は短く、当初は僅か2話で済ませてしまいました。京アニスタッフも流石に物足りなさを感じたのか、後に特別編として道中の2話が放送され、ようやく三人の絆に深みが生まれる内容になりました。私も2話だけで終わったことに不満があり、特別編を合わせた全4話で満点評価になります。1クールという短さがTVアニメ版の唯一の欠点です。それを打ち消せるほどのクオリティはあるのですが、できれば最初から余裕をもった話数で制作してほしかったです。

AIRに登場するKanonキャラ

観鈴が通う学校の生徒として『Kanon』の月宮あゆ水瀬名雪沢渡真琴がカメオ出演するのは有名です。初回視聴時は『Kanon』未体験で分かりませんでしたが、後で見返すと声優さんと口調まで同じで爆笑しました。また、TVアニメ用にキャラ絵が用意された志野さいか(6さい)のお母さんのデザインは名雪の母親の秋子さんに似ています。全く同一のキャラデザではないし、中の人も異なりますが、エアインテークの付いた髪型はどう見ても秋子さんです。

Keyの人気を不動のものにした『Kanon』は、2002年に東映制作のTVアニメ版が放送されています。東映版『Kanon』は悪い意味で印象深い作品だったそうで、京アニ版『AIR』の成功を受けて『Kanon』のリメイクを望むファンは多かったようです。そんな鍵っ子の期待に応える形で、2006年には革命的なクオリティを誇る京アニ版の『Kanon』が2クール(24話)で放送されるのでした。もっとも、私が『AIR』と『Kanon』を視聴したのはその16年後です。

Blu-ray BOXの特典映像

Blu-ray BOXには特典映像としてロングバージョンのオープニングが収録されています。放送時は1分30秒にカットせざるをえなかった『鳥の詩』の1番に乗せて、本編では使用されなかった名シーンの数々が描かれます。原作をプレイしていれば「あのシーンだ!」と気付くと同時に、全部盛り込んで2クールで放送してほしかったという残念な気持ちになりました。この意欲的なロングバーションを見るに、京アニは原作要素満載の2クールで制作したかったのではないでしょうか。

声優さんのインタビュー集『こえのきおく』も一見の価値があります。私はアニメを一つの世界として楽しみたいので、「中の人」は存在しない前提で視聴します。決して声優さんを蔑ろにしているわけではなく、演技のレベルが高すぎてキャラ本人の声と思えるからです。このインタビューでは観鈴のハマリ役だった故川上とも子氏をはじめとする方々が、『AIR』への思い入れを淡々と語ってくれます。原作だけでは分からなかった声優さんの意気込みに触れられて良かったです。

スタッフのコメンタリーは無し

Blu-ray BOXの残念な点は、制作スタッフのオーディオコメンタリーが収録されていないことです。この手のBOXにはコメンタリーが付いているのが普通だと思っていたので、買ってから気付いてがっかりしました。かつて発売されたDVDの初回限定版に収録されていたコメンタリーでは、京アニスタッフが制作裏話を熱く語っていたそうです。BDを持っていれば今更DVDを買う必要はないのですが、TVアニメ版の映像表現にかなり興味があるので、コメンタリー目的の購入を検討しています。

2019年の京アニ放火事件について

2019年、京アニ第1スタジオが放火され、社員36名が死亡、33名が負傷するという痛ましい事件が起きました。私は2018年の『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』の大ファンなので、事件の報道は目を背けたくなるほどショッキングなものでした。今回初めて『AIR』を観て、17年前とは思えないクオリティの高さに感動すると同時に、制作スタッフの中に事件の犠牲者の名を見つけてやるせない気持ちになりました。素晴らしいアニメ作品で感動を与えてくださった方々のことは、一生忘れません。

関連書籍

AIR ART WORKS

AIR ART WORKS AIR ART WORKS

全てのCGを掲載した原画集

2001年、パラダイムからCG・原画集『AIR ART WORKS』が発売されました。当時の鍵っ子には必携の書だったと思われますが、関連サイトに掲載されておらず、Amazonのおすすめ商品に表示されるまで存在を把握できませんでした。私が原画集に手を出すのは初めてのこと。樋上いたる先生の「いたる絵」をじっくり鑑賞したかったので直ちに注文しました。重厚なハードケースの帯には「あの夏の日々を、憶えていますか…」のキャッチコピー。観鈴との思い出をいつまでも残したいです。

本書はPC向けのエロゲー版で使用されたCGをフルカラーで掲載。イベントCGはもちろん、立ち絵や背景カットも全部あります。綺麗な印刷物で鑑賞すると改めて『AIR』のCGの美しさを実感できますし、原作で泣いたシーンを思い出して涙ぐんでしまいます。ヒロイン達のスリーサイズや誕生日のほか、挿入歌の歌詞、DREAM編のシナリオチャートが掲載されており、エロゲー版のファンブック的な要素もあります。もちろん未成年が買ってはいけません。

樋上いたる先生の独特の絵柄

本書にはラフ画、線画、影指定のほかにボツ絵も掲載されています。ラフ画にはいたる先生の試行錯誤の跡を見られるほか、謎の落描きが残っていて親近感が湧きます。中にはデッサンが怪しかったり、同じキャラなのに顔が違っていることもありますが、可愛い女の子を描くセンスは飛び抜けています。観鈴と神奈は本当に愛おしくて、いたる絵だからこそ二人のことを大好きになれました。塗りを担当するグラフィッカーのレベルも高く、いたる先生の線画を上手く補っています。

いたる絵の特徴として挙げられるのは、目が大きくて顔の外側寄り、下瞼のライン上に小さい鼻、そのすぐ下に口という独特のパーツ配置です。本書を買った目的の一つは『AIR』の二次創作イラストを描く際の参考資料です。いたる絵の絶妙なバランスを再現するため、先生の線画を激しくリスペクトしながら模写して研究を重ねました。今となっては、いたる絵の口の高さに違和感を持たなくなり、低いほうが変だと感じます。この現象を「いたるリアリティ」といいます。

今では見る機会のないCGも掲載

PC版発売時にポスター、グッズ、雑誌に使われたCGが載っているのも嬉しいです。2022年に『AIR』に入門すると、2000年当時の宣伝CGを見る機会はありません。TVアニメ版OPに登場する「白いワンピース姿で向日葵を手にする観鈴」が、雑誌の描き下ろしCGに基づくイメージだったのは初めて知りました。「線路の上を歩く美凪」と「キックボードに乗る佳乃」のラフ画もあり、京アニがここまで資料をチェックした上でアニメに盛り込んでいた事実に感動します。

全然いかがわしくない18禁CG

2000年に発売されたPC版の『AIR』は18禁のエロゲーなので、作中にはヒロイン達とHなことをするシーンがあります。本書にはそういったCGも掲載されており、ギャルゲー版しか知らない人が読めばイメージが損なわれるかもしれません。当サイトは全年齢対象だから具体的には書きませんが、普通に全裸の観鈴が載っています。他のCGより艶めかしさを強調した塗りで、モザイクがかけられるほど露骨な描写です。美凪のCGは特にエロゲーっぽいです。

実を言うと、私は二次元・三次元を問わず性的なものは一切受け付けない、という特異な性質の持ち主です。三次エロは本能的にグロ扱い。二次元の可愛い女の子は大好きでも、そこにエロ要素が加わると拒否反応を起こします。ところが『AIR』の該当シーンの第一印象は「可愛い…」でした。どうみても性的な描写なのに全くいかがわしさを感じず、ヒロイン達の初々しい雰囲気に惹きつけられました。これをパラダイムシフトと言うのでしょう。

昔からエロゲーマーの間では「いたる絵はエロくない」「エロ目的でKeyのエロゲーを買ってはいけない」と認識され、『AIR』もエロゲーとしては高く評価されていないようです。私が拒否反応を起こさないのだから、いたる先生の絵は本当にエロくないのでしょう。ですが、性的なことを何も知らないであろう観鈴が往人を受け入れるシーンは、儚く、悲しく、『AIR』の世界観に合っていました。エロゲー版の『AIR』は、そういうCGまで優れていたのです。

いたる先生のコメントも……

本書の最後は、いたる先生とグラフィッカーのみらくる☆みきぽん先生が描いたスタッフの絵と、スタッフの超適当なコメントで締めくくられます。Keyの中の人が楽しそうにやっているのは伝わりますが、欲を言えば、いたる先生とグラフィッカーの真面目なコメントも読みたかったです。昔の雑誌やインターネット記事に載っていたかもしれないスタッフのインタビューは、もう読む術がありません。もっと『AIR』にこめられたスタッフの想いを知りたいです。

プレミアムアート コレクション TVアニメーション AIR

プレミアムアート コレクション TVアニメーション AIR プレミアムアート コレクション TVアニメーション AIR

TVアニメ版のファンブック

2005年、マッグガーデンから『プレミアムアート コレクション TVアニメーション AIR』が発売されました。京都アニメーション制作のTVアニメ版『AIR』のファンブックであり、上記の原画集と併せて鍵っ子必携の書と言えます。カバーイラストと付属ポスターは本書のための描き下ろし。「いたる絵」を絶妙に再現した観鈴に萌えます。帯のキャッチコピーは「あの夏の思い出を…もういちど」。原画集もファンブックも、観鈴と過ごした夏の思い出を強調して泣かせにきます。

本書はTVアニメ放送時に雑誌で使われたイラスト(Blu-ray BOXにも収録されています)のほか、キャラ紹介、特別編を含めた全14話の紹介をフルカラーで掲載しています。キャラの立ち絵と劇中の名場面、アニメ用に設定された私服や小道具も載っており、アニメ版準拠の二次創作イラストを描く際の資料として役立ちます。驚異的な作画で鍵っ子を唸らせたオープニングの原画の一部も掲載。観鈴の長い髪を枚数をかけて動かしてみせたことに畏怖せざるを得ません。

本書の中で特に価値のあるコンテンツは、制作スタッフのコメントです。監督の石原立也氏、キャラデザ・総作画監督の荒谷朋恵氏、シリーズ構成・脚本の志茂文彦氏のインタビューは必読。主要スタッフが実際に『AIR』をプレイした上で、原作に忠実な「アニメ版AIR」を目指して制作されたことが分かります。私がTVアニメ版を観て感銘を受けた要素は、『AIR』の世界観を再現するため緻密に設計され作り込まれたものでした。以下、コメントの一部を抜粋して紹介します。

リアルな画作りを意識した石原監督

石原氏は監督に決まってから原作をプレイして見事にハマリ、『AIR』のイメージを損なわないよう作品を纏め上げられました。上述したように、TVアニメ版では実写映像を意識した演出や、観鈴の女の子らしい仕草がふんだんに盛り込まれています。それは最後に「観鈴の死」を描くため、石原監督が限りなくリアルな画作りを意識して制作に取り組まれた結果でした。あの結末が軽々しく見えないよう、観鈴に敬意を払って制作されていたことに感激します。読んでいて泣けてきます。

観鈴以外のキャラへの思い入れも具体的に語られます。TVアニメ版の人物描写は非常に優れていますが、それは日常パートの何気ない仕草にこだわっているからです。監督の絵コンテが載っており、原作の名シーンやキャラの心情描写をこうやってアニメに起こしていくのか、と興味深く読みました。声優さんの演技力の高さについても述べられており、アフレコ中に涙が溢れてきたという話には納得です。石原監督の手腕は、2006年の『Kanon』でも存分に発揮されました。

いたる絵をアニメで表現した荒谷氏

キャラデザ・総作監の荒谷氏のインタビューも面白いです。TVアニメ版のキャラデザは樋上いたる先生の「いたる絵」を忠実に再現した上で、違和感なく表情豊かに動かしています。荒谷氏も原作をプレイして感動し、原作キャラの線一本一本から伝わる感覚を忠実に再現するというスタンスでキャラデザに取り組まれました。やはりいたる絵の口の高さは独特のようで、いたる絵を見ながらイラストを描いて監督とともにキャラデザを決めていったそうです。

荒谷氏が手掛けた主要キャラの立ち絵と表情の線画は、コメントと併せて掲載されています。いたる先生の一風変わった絵をアニメ向けに再現できるのは神業としか言いようがありません。観鈴と神奈はとにかく可愛いし、往人と柳也はイケメンだし、往人の母親のデザインも優れているし、それが当然のように動くのも凄すぎるし、もう絶賛以外の言葉が出てこないです。荒谷氏の「いたるリアリティ」なキャラデザが、TVアニメ版の『AIR』感を際立たせています。

長編を1クールに収めきった志茂氏

シリーズ構成・脚本の志茂氏は、『AIR』を発売初日に購入したほどのKeyファンです。DREAM編の3ルートを一本化するのは大変だったそうですが、それよりも大変なのは長編の原作を1クールに収めることでした。ここは入れる、ここはカットする、カットしたシーンから台詞だけ持ってくる、という難しいパズルのような作業を経て、あの12話(+2話)が出来上がりました。駆け足感は否めなかったものの、原作を愛する志茂氏だからこそ整合性のある脚本になったといえます。

TVアニメ版の脚本の良かった点は、佳乃・美凪ルートの見どころをしっかり抑えていたことです。当初は観鈴のストーリーだけに絞る案もあったのが、佳乃と美凪も描くべきだろうと考えて3ルートが統合されました。この決定に拍手を送りたいです。原作ファンが議論を繰り広げたラストの少年少女は、監督と同じく「絶対に原作通りでいく」との方針で謎のままになりました。妙なアレンジや解釈を加えず徹底的に原作をリスペクトしたおかげで、TVアニメ版が成功したのです。

全てのスタッフに愛されたAIR

作画監督、絵コンテ、音響監督、美術監督、色彩設計、撮影監督、設定・小物を担当したスタッフ、プロデューサーの方々も、それぞれの分野で全力を尽くされました。『AIR』の空気感を出そうと試行錯誤しながらクオリティを高めたことや、TVアニメ版の『AIR』を後々まで大切にしてほしいとの熱いメッセージが記されていて、ここまで原作を愛しているスタッフに制作してもらえたのは、観鈴や神奈にとって本当に幸運なことだと思いました。本書のインタビューを読めて良かったです。

AIRの余波

人生観に与えた影響

2022年7月に『AIR』を選んだときの「夏らしい爽やかで感動的な作品」という期待は、見事に打ち砕かれました。原作とTVアニメ版で立て続けに泣かされ、寝込んでいしまい、食事が喉を通らない日々が続きました。私の人生の中で、ここまで強烈な衝撃を受けた体験はありません。観鈴が亡くなった事実を受け入れられず、観鈴の夢を見るぐらい観鈴のことばかり考え、日常生活に支障をきたす危うい精神状態になり、気分転換の目的は果たせなかったように思われました。

しかし、観鈴が痛みに耐えて悲しみの連鎖を断ち切った生き様に心を打たれ、私のライフワークのモチベーションは急激に高まりました。1年放置していた「GEARS」の記事を書き上げ、10月の更新をもってサイトは完成。その際に『AIR』の感想も公開しました。後述する「REFORGEN」では『AIR』の二次創作絵を公開するなど、「観鈴が成し遂げたこと」を見習って精力的に物事に取り組むようになりました。次は「東方巡遊記」の記事執筆を進めようと意気込んでいます。

原作とTVアニメ版を制作したクリエイターの情熱も大きな刺激になりました。一つの作品づくりに常軌を逸した熱意をこめる…その熱い意欲は、趣味の創作活動にも欠かせないものです。全てのスタッフが本気を出して『AIR』を作り上げたからこそ、数え切れないほどの鍵っ子が愛に満ちたイラストやSSを書いたのです。粗製乱造されたコンテンツが瞬時に消費されて乗り捨てられる2020年代に、作る側と楽しむ側の双方が熱くなっていた時代の逸品に触れられたのは貴重な体験でした。

私はサイト上では紳士的に振る舞っていますが、本質的には幼稚で品性下劣な卑劣漢です。個人サイトに引き籠もって活動しているのは、SNSや界隈の揉め事を見るのが嫌なだけでなく、自分自身の邪悪さを露呈させないためでもあります。観鈴は、私と正反対の純粋な心の持ち主です。観鈴に出会えたおかげで自分の魂がどれほど穢れているか自覚し、日頃の下劣な言動を深く恥じるようになりました。これからは常に観鈴のことを意識して、不断の努力で人間性を高めていきたいです。

衝動的に買ってプレイした『AIR』は、私の人生観に大きな影響を及ぼす作品でした。存命なら2022年7月23日に45歳になっていた神尾観鈴さんのおかげで、放置状態のサイトを完成させられました。母親が元気なうちに親孝行をしたいと思いました。自分の未熟さを自覚し、真っ当に生きていこうと思いました。ライフワークである歴史探訪を続ける意味を再確認できました。私を正しい方向に導いてくれた観鈴ちんと、川上とも子さんと、Keyと京アニの皆様に、「ありがとう」と伝えたいです。

京アニ版のKanonを視聴

Kanon Blu-ray BOX
『AIR』に衝撃を受けた後、前作『Kanon』の世界を体験しようと思いました。1999年に発売された恋愛アドベンチャー『Kanon』は、Keyの記念すべき1作目です。この作品の成功によって尖った作風の『AIR』が生まれ、後にギャルゲー版やTVアニメ版が制作されたのです。残念ながら2022年9月時点ではSwitch版が存在せず、2006~2007年にかけて放送された京アニ制作のTVアニメ版から入門しました。その切なく温かい物語に触れて号泣した話は、『Kanon』の感想ページに記述しています。

はじめてのねんどろいど

ねんどろいど 月宮あゆと神尾観鈴
『AIR』は意外なところでも価値観の変化をもたらしました。ねんどろいどの購入です。フィギュアは痛々しいグッズというイメージが強くて抵抗を持っていたのが、『AIR』と『Kanon』で昂ぶった感情を抑えられず衝動的にねんどろいどを買いました。原作の「いたる絵」を再現しているわけではないものの、造形も塗装も素晴らしくて眺めているだけで幸せになります。今ではPCデスク上にあゆと観鈴を飾って、毎日癒やされています。詳しくはねんどろいどのページをお読みください。

28年後の二次創作イラスト

古生物学者の観鈴ちん パイロットの神奈様
古生物学者の国崎観鈴教授(45)とパイロットの神奈様。1994年の夏、夢を見終わった観鈴が空に昇って神奈との邂逅を果たしたとき、何かの奇跡が起きて二人とも地上に舞い戻りました。往人と結婚して恐竜研究者になった観鈴、プライベートジェットで大空のフライトを楽しむ神奈。そんな幸せに満ちたアフターストーリーを見たいと心から願い、大真面目に「いたる絵」を再現した二次創作イラストを描きました。手抜きは絶対に許されません。これほど熱意をもって絵を描いたのは初めてです。

私は東方の怪しげなイラストを公開するサイト「REFORGEN」を運営しています。サイトに引き籠もって黙々と創作に励んできたおかげで、画力はともかく装備の考証と描き込みには自信があります。東方で培ってきた妄想力の全てを注ぎ込んで仕上げたイラストは、これまで描いた中で最高の作品になりました。閲覧者の皆様からも好評で、古き良きファンサイトを運営している感覚です。幸せな観鈴と神奈の絵を描き上げて、少し救われた気がします。

AIR、KanonからCLANNADへ

CLANNAD Switch版
『AIR』のSwitch版とTVアニメ版、『Kanon』のTVアニメ版と来たら、次はいよいよ『CLANNAD』のSwitch版です。『CLANNAD』は数あるKey作品の中で特に評価が高い作品です。単体だけで大ボリュームなのに、スピンオフが2作、TVアニメは4クールもあります。前2作がそうだったように何も知らない状態から始め、どれほど凄い作品か見極めようと思います。Switch版をクリアしてBlu-rayを全話視聴したら、感想を書いて公開する予定です。

別館「KEYRING」の開設

本ページの感想文は2022年9月に初版を公開しました。『AIR』のSwitch版とTVアニメ版に感銘を受け、勢いに任せて書いた粗削りの感想文は、誰かに読まれることを想定していませんでした。ところが感想ページは速やかにインデックス登録され、アクセスが増え始めました。古参の鍵っ子が熱い感想や考察を公開していた個人サイトが失われた結果、新参者に過ぎない私のサイトがアクセスされるようになったのです。確かに、今時『AIR』の長文感想を置いているサイトは希少種です。

原作発売から20年、TVアニメ放送から17年を経た2022年に、感想を求めて検索する人が多い事実にも驚かされました。『AIR』という作品が本当に優れているからこそ、新しい鍵っ子が生まれ続け、感想や考察にも需要が存在するのでしょう。そう確信した私は感想文を5倍以上に加筆し、「GEARS」から独立させました。2023年1月に開設した新サイトの名称は「KEYRING」。高度な情報は掲載していませんが、昔の鍵っ子のファンサイトのようにKey作品の素晴らしさを伝えたいです。

2022年の夏、YouTubeで偶然聴いた『鳥の詩』は私の人生を一変させました。Switch Liteと『AIR』を衝動買いし、TVアニメ版のBlu-rayを購入し、前作『Kanon』のTVアニメ版にも手を伸ばしました。2作とも本物の名作であり、観鈴とあゆの生き様に強い感銘を受けて涙を流しました。それから感想を書いて、イラストを描いて、ファンサイトを開設するまでの半年はあっという間でした。あの夏、海辺の町で観鈴ちんと出会ったこと。その小さな奇跡が、今の私の生きる糧です。ぶいっ!

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