東方巡遊記 GEARS

ナビゲーション

2022-01-23 改訂

旅を円滑に実施するための地図とコンパス。デジタル機器には頼らず自力で道を進みます。

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はじめに

妙法山の道標
日本各地を自由気ままに巡る自転車と徒歩の旅。私の旅の目的は神社・寺院・古墳・史跡・山岳を巡る歴史探訪ですから、訪れる地域の事前調査や計画作成が欠かせません。これが適当だと高確率で残念な旅になってしまいます。何日もかけて地域の史跡を巡る探訪活動においては、順調な行程と記事執筆のためにも、しっかり探訪ポイントとルートを決めて進行するのが理想的です。

ツーリングやバックパッキングの場合、大まかなルートは道路の青看で把握できるから問題ありません。自分の走行・歩行速度から距離と時間の兼ね合いまで把握しているため、大体計画通りに進行できます。道を外したら引き返せばいいし、分からなかったら地元の人やドライバーに聞けば大丈夫。深い山に入っても、車道を辿れば必ず人里に復帰可能です。

しかし山歩きではそう簡単に行きません。それほど深い山でなくても道が不明瞭だったり、地形が険しくてペースが狂う場合があります。うっかり道を外すと復帰は困難になり、山を彷徨って滑落等の重大な遭難事故に繋がることも。山の道迷いは命に関わる事態ですから、安全に歩くための読図・ナビゲーションのスキルとツールが必須となります。

私はアナログ派なので紙の地形図とコンパスを愛用。山歩きの際はルートの先読みと現在位置の確認を実施し、標識等が整備されたハイキングコースであっても手を抜かないようにします。紙地図に防水性はありませんので、ジッパーバッグによる防水処置は必須。スペアを携行すると更に安心です。コンパスを紛失しないよう脱落防止も忘れてはなりません。

GPSは必要性を感じていないので未所持。アナログのナビゲーションに習熟した上で使うなら便利でしょうが、日頃からGPSに頼りきっていると破損・紛失時に行動不能になると思います。今では当たり前になったスマートフォンは持たない、使わないと決めています。便利すぎると旅感が損なわれるから、最新のデジタル機器は極力増やさないよう心掛けます。

目次

計画と記録

行程表

行程表
旅の基幹となる計画表。ツーリングやバックパッキングで活用します。

熊野古道巡礼の行程表 三瓶山トレッキングの行程表
最初期の旅は行き当たりばったり。どこに行けばいいのか、何をすればいいのかも分からなくなり、当初の予定から大きく外れることが多々ありました。それが旅の面白さでもあるのですが、色々失敗しすぎたおかげで行程の管理を重視するようになり、事前に作成した行程表に基づいて旅をする方向性が確立されました。どんな旅でも行程表は必ず作成します。

行程表には日程・ルート・距離といった基本情報から、鉄道やバスの時刻と運賃、史跡巡りの順序などを記載。野宿が基本のため、寝場所になりそうな候補地も載せています。媒体はただのコピー用紙ですから、雨が最大の弱点。絶対に濡らさないようジッパーバッグに入れて携行します。行程表通りに進まない場合もありますので、状況に応じてプランやルートは柔軟に変更します。

長い道のりを経て徹底的に合理化された行程表。事前に分かる情報を網羅することで、旅先で迷わず探訪活動に専念できるのが何よりの利点です。しかし度が過ぎると行程表に縛られて事務的に行動するようになり、自由な旅らしさが著しく損なわれます。行程の作り込みはほどほどにして、たまにはノープランで適当に進んでみることも大切です。

旅日記

旅日記
伝票ボード・メモ帳・ボールペンの筆記具3点セット。旅の記録を残す道具です。

九州ツーリングの旅日記
九州ツーリングの旅日記 九州ツーリングの旅日記
あらゆる出来事を記録するために携行する旅の必需品。時刻・距離・場所を基本情報として、出来事・状況・心境など些細なことも逐一書き込みます。かつては旅の思い出を忘れないように日記として書いたのが、その濃密な内容から探訪記事の執筆に活用するようになりました。「東方巡遊記」に掲載する旅の記事は、全て行動中のメモに基づいて執筆しています。

伝票ボードはリヒトラブ クリップボードボールペン及びマーカーも普通の筆記具です。メモ帳は撥水性の高いアピカ レインガードを愛用。雨続きの悲惨な旅もしっかり記録できるため、記事執筆に際して大いに役立ちます。そういった実用性だけでなく、メモ帳にペンで書きつけた旅日記は、それ自体が大切な思い出の品になります。自転車と徒歩で旅をするなら、旅の記録もアナログで残したい。やはり旅日記は紙媒体が一番です。

リヒトラブ クリップボード

リヒトラブ クリップボード リヒトラブ クリップボード
リヒトラブ クリップボードにメモ帳と切符を挟む リヒトラブ クリップボードに行程表と切符を挟む
普通の伝票ボード。旅日記に欠かせない道具です。メモ帳単体では書き込むのに不安定ですから、このような下敷きを併用すると便利です。メモ帳を挟んでおくとウェストバッグから取り出しやすい利点があるほか、切符やチケットを挟んで携帯できるのも旅の中で役立つ機能です。

アピカ レインガード

アピカ レインガードをツーリングに使用 アピカ レインガードアピカ レインガード
撥水性の高いメモ帳。旅日記の本体です。完全な防水紙ではないものの優れた耐水性があり、真夏に汗が滴り落ちてもシワシワにならず、雨に濡れた状態で書き込んでも破れません。この耐水性は大きな強み。旅に限らずアウトドア全般に適したメモ帳と言えます。普段はA6サイズを携行し、コンパクト性を求めるときだけA7を使います。耐久性を活かし、救急セットの筆記具としても備えています。

ボールペン及びマーカー

ボールペン及びマーカー ラインマーカーでツーリングマップルに線を引く
普通の筆記具。旅日記を書くためのボールペンは黒と赤。旅の最中にインクが出なくなることもありますから、必ずスペアを携行します。蛍光イエローのラインマーカーは昭文社『ツーリングマップル』用。自転車で走った道に線を引いて旅の記録にします。キャップ式は外す動作が面倒なので、片手で扱えるノック式がベストです。

道路地図

昭文社『ツーリングマップル』(2007~2010年版)

昭文社『ツーリングマップル』全冊セット 昭文社『ツーリングマップル』全冊セット
ツーリングに必携の道路地図。旅人のバイブルといっても過言ではありません。

昭文社『ツーリングマップル』北海道版 昭文社『ツーリングマップル』北海道版
本来はバイク用ですが、使い勝手の良さからサイクリストやドライバーにも広く愛用されるツーリングマップル。全7冊で、一部重複しながら全国の道路を網羅。もちろん全冊持っています。A5サイズの『ツーリングマップル』とB5サイズの『ツーリングマップルR』が刊行されており、前者は通常の紙地図、後者はリング綴じの耐水紙。私はコンパクトで自転車旅に携行しやすい通常のツーリングマップルを愛用します。

ツーリングにおける実用性を追求して編集されただけあって、その完成度の高さは圧倒的。実走調査した上での交通状況が記載され、ツーリングに適した快走ルートを強調しているのが特に役に立ちます。私はあまり立ち寄りませんが、実際の取材に基づくグルメ・温泉等の観光情報が盛りだくさん。ルート上のコンビニ・道の駅・キャンプ場が分かりやすく表記されているのも野宿派にはありがたいです。

バイク用に作られていることもあり、自転車の天敵である勾配やアップダウンの有無は分かりにくいです。等高線や道の形状を見て、険しい車道かどうかを判断するしかありません。あくまでツーリングが目的の地図ですから、町や集落の細部も省略。大きい市街地に限って拡大図が用意されています。これだけで全てのナビゲーションには対応できず、分かりにくい箇所は後述のGoogleマップ2万5千分1地形図と併用します。

昭文社『ツーリングマップル』関東甲信越版 昭文社『ツーリングマップル』をウェストバッグで携行
ツーリングの際はフロントバッグ(オーストリッチ F-702)上部に装着したウェストバッグ(モンベル トレールランバーパック 4)に入れ、いつでも止まって地図を見られる態勢です。通常のツーリングマップルに耐水性はありませんので、雨天走行時はバッグにレインカバーを被せて保護します。何シーズンも使うと雨や汁が染み込んで表紙がボロボロに。7冊ともガムテープで補強しながら使っています。

昭文社『ツーリングマップル』東北版
道路事情は時代の流れとともに変わります。新しい道が開通したり、道の駅が閉鎖・新設されるなど重要な変化が多々あり、古い地図は時代遅れになります。本当は定期的に買い替えたほうがいいと分かっていても、ここまで酷使すると愛着が湧いて手放せません。ラインマーカーで線を引いた道の全てに、旅の思い出が詰まっています。どれだけ古くなっても、この地図を使い続けるでしょう。

Googleマップ

Googleマップから作った探訪用地図
Googleマップから作成した地図。探訪ポイントとルートを追記して使います。

上述したように、最初期の旅は行き当たりばったりでした。ツーリングの際に市街地に入り込んで迷ったり、幹線道路の乗り換えを間違えて別の道に外れたりして、目的地に辿り着けない事案が頻繁に発生しました。旅慣れした今日でも、初めて訪れる地域の道路事情や位置関係は何も知りません。そもそも私が目的とする史跡は、現地にも一切の看板がないまま佇んでいることが多いです。

Googleマップから作った東海道ツーリングの地図 Googleマップから作った富士山麓ツーリングの地図
Googleマップから作っ物部神社探訪の地図 Googleマップから作った尾道探訪の地図
そこで、分かりにくい市街地や探訪ポイントはGoogleマップで入念に事前調査。移動手段に応じてルートを設定し、路線番号・交差点名・目印を追記した探訪用の地図を作成します。自転車では昭文社『ツーリングマップル』、徒歩では2万5千分1地形図と組み合わせて使うのが基本。この地図を使い始めてから旅先で迷わず探訪活動に専念できるようになり、記事が格段に充実しました。

ツーリングでもバックパッキングでも、事前に設定したルートに従って進むのは合理的ですが、行程表と同じく計画に縛られて行動してしまう欠点もあります。ある地域の史跡を徹底的に巡るという探訪活動の性質上、事前調査と計画作成は絶対に必要です。それでも、時々は計画から外れて寄り道したり、迷ってみる旅の楽しみ方も忘れないようにしたいです。

地形図

2万5千分1地形図

保津峡の2万5千分1地形図 保津峡でハイキング
稲荷山の2万5千分1地形図 戸隠の2万5千分1地形図
山のナビゲーションに欠かせない地形図。国土地理院の地理院地図を使います。

等高線によって地形が表現され、道や建物等も詳しく記載。実際の地形と照らし合わせて山を歩けるほど精密な地図です。計画段階で地形やルートをよく確認し、旅に際してはカシミール3Dで選択・出力したものを概ね等倍にプリントアウト。ジッパーバッグで防水処置を施した上でウェストバッグに入れて携行します。冬山などナビゲーションを重視する際は、防水性が高いISUKA ドライマップケースに入れてザックに装着します。

登山道が整備された山域ではバックアップとして。道が不明瞭または存在しないような深い山では、コンパス(SILVA No.3)と併用して地形を照合しながら進みます。決して登山専用の地図ではなく、山麓や集落を探訪する際にも地形が把握しやすくてGoogleマップより正確です。この地図を基に地形が読めるようになれば、山歩きや歴史探訪の行動範囲は飛躍的に広がります。

昭文社『山と高原地図』

昭文社『山と高原地図』大峰山脈
山歩きに最適なガイド付きの地形図。整備された山域ではメインの地図として使います。

昭文社『山と高原地図』八ヶ岳 昭文社『山と高原地図』戸隠
全61冊あり、全国の主要な山域をカバーする登山用の地図です。山域の概説が記載された小冊子と5万分1地形図から成り、山行計画の作成はもちろんのこと、実際のナビゲーションにも使えます。地図は耐水性があり、多少の雨には耐えられる安心仕様。コースタイム・テント泊適地・山小屋・水場といった基本情報から、岩場や鎖場のような危険箇所まで注記されていて実用性は高いです。

登山道に標識が整備された山域なら、この地図を見るだけでも迷わず行動可能です。しかし山は恐ろしいもので、ハイキングコースだといって油断していると道が不明瞭になって、現在地すら分からなくなる事態も発生します。地図を見ずに歩けるような山であっても、バックアップとして2万5千分1地形図とコンパス(SILVA No.3)を携行するのが基本です。

地図入れ

ジッパーバッグ

ジッパーバッグ 2万5千分1地形図をジッパーバッグで携行
パッキングに多用するジッパーバッグ。紙地図の保護にも役立ちます。

上述した行程表Googleマップ2万5千分1地形図は普通のコピー用紙に印刷します。剥き出しの状態では汚損しやすく、雨が最大の弱点。汗が滴り落ちるだけでも簡単にダメージを受けます。旅の基幹となる計画や地図を失うと行動不能になりますから、絶対に濡らさないようジッパーバッグで防水処置を施し、ウェストバッグに入れて携行。これなら多少の雨にも耐えられます。雨天や冬山でナビゲーションを行う場合は、更に防水性・機能性が高いISUKA ドライマップケースを使います。

ISUKA ドライマップケース(2012年から使用)

ISUKA ドライマップケース ISUKA ドライマップケース
防水仕様の地図入れ。雨天・冬季のナビゲーションに使います。ナイロン製のベースにポリウレタン製のケースが貼り付けられた作りで、A4サイズでプリントアウトした2万5千分1地形図が端を折った状態で入ります。ケースは固いジッパーで密閉される上、折り返してベルクロで留めるため防水性は高いです。紙地図を雨と雪から隔離した状態で携行可能であり、地図の判読も容易。ジッパーバッグに入れて携行するより機能的です。

ISUKA ドライマップケースをザックに装着 ISUKA ドライマップケースをザックに装着ISUKA ドライマップケースを広げて使用
ケースはベルクロストラップで丸められ、サイドリリースバックル付きのストラップも備えます。ザックのショルダーハーネスに取り付け、行動中は嵩張らないよう丸めた状態で携行。地図を確認する際はベルクロとバックルを開放して手元に広げる、という使い方です。コンパス(SILVA No.3)を入れた戦人 コンパスケースまたはMAGFORCE PDA Pouchの裏面のウェビングにストラップを通し、セットで運用するとナビゲーションしやすくなって便利です。

コンパス

SILVA No.3

SILVA No.3と猿田彦神社の道開きの御守り SILVA No.3をコンパスケースに収納
スタンダードなベースプレートコンパス。猿田彦神社の道開きの御守りとセットです。

SILVA No.3 SILVA No.3と後醍醐天皇陵
地形図と組み合わせて使うベースプレートと、方角を確認するためのコンパスが一体になったデザイン。コンパスのカプセルにはオイルが封入されており、高精度かつスムーズに磁北(真北ではありません)を示します。カプセルは回転式のリングを備え、目標物の設定やルートの維持に使用します。ここでは解説しませんが、コンパスによるランドナビゲーションは練習すれば簡単に習得できます。尚、こういった機能を持たないコンパスは山歩きでは全く役に立ちません。

MAGFORCE Humberg 10"x8"にコンパスケースを装着 ザックのショルダーハーネスにコンパスポーチを装着
コンパスは2万5千分1地形図と同じくナビゲーションに不可欠のツールです。モンベル リフレクティブ張り綱 3mmとフック(NIfCO GS7)で脱落防止のランヤードを作り、行動中に紛失しないよう戦人 コンパスケースまたはMAGFORCE PDA Pouchに接続・収納して携行します。

普段はウェストバッグ化したショルダーバッグ(MAGFORCE Humberg 10"x8")に装着。ウェストバッグを使わない場合はザックのショルダーハーネスに取り付けたり、サコッシュに入れて携行します。コンパスはいつでも取り出せる態勢です。

文献

『古事記』、『日本書紀』、『風土記』の逸文、『万葉集』
歴史探訪の基礎知識となる文献。特に神話・古代史関係が多いです。

『古事記』『日本書紀』『風土記』の逸文、『万葉集』…奈良時代に成立した日本最古の歴史書、地誌、歌集です。古代の人々が書き記した壮大な神話と伝説、様々な出来事、風流な和歌が写本という形で現代まで受け継がれ、研究対象として、教養として、あるいは趣味の一つとして私達を魅了し続けています。私のライフワークである歴史探訪の旅には、神話や伝説の舞台を巡って古代人の心を感じる、という明確な目的があります。

出雲の八束水臣津野命が国引きに用いた伯耆国の火神岳 天孫の日子番能邇邇芸命が天降った竺紫の日向の高千穂のくじふるたけ
神倭伊波礼毘古命が初代天皇として天下を治めた畝火の白檮原宮 倭健命が山の神に敗れた伊服岐山
出雲の八束水臣津野命が国引きに用いた伯耆国の火神岳(鳥取県の大山)、天孫の日子番能邇邇芸命が天降った竺紫の日向の高千穂のくじふるたけ(九州南部の高千穂峰)、神倭伊波礼毘古命が初代天皇として天下を治めた畝火の白檮原宮(畝傍山麓の橿原神宮)、倭健命が山の神に敗れた伊服岐山(近江国の伊吹山)。どれも素晴らしい場所です。

『古事記』や『風土記』の伝説は奈良時代に突然創り出されたわけではありません。その原像は飛鳥時代より遡って古墳時代、あるいはそれ以前から伝わっていたと思います。極めて過酷な自然環境で暮らした古代の人々は、人智を超越した力を持つ大自然に精霊や神様の存在を感じました。災害に恐怖し、豊作に感謝し、畏敬の念をもって山の神様を崇めたのです。

残念ながら、古事記の成立から1300年経った現在では山林の乱開発が進み、自然に対する敬意や信仰は希薄になる一方です。西洋の最新装備を導入し、合理主義に基づいて旅をする私が言っても説得力はないかもしれません。それでも文献を「道標」として、古の精霊や神仏を崇めて山を歩くことで、少しでもいいから古代人の心を感じたいです。

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