2022-09-17 改訂
ファーストエイドキット、IFAKとも。日常生活や旅先で応急処置を施すための重要な救急品です。
自転車と徒歩の旅に出かける上で忘れてはならないのが、非常時の救命手段です。公道を走るツーリングでは常に交通事故の危険に曝されており、山歩きにも滑落・遭難といった重大事故の危険が潜んでいます。安全第一の精神で行動すれば事故の可能性は格段に低下しますが、不可抗力的に巻き込まれることはあります。自分が事故に遭わなくとも、旅先で事故現場に居合わせたり、遭難者を救護する場面もあるでしょう。非常事態を想定し、命を守るための準備を整えた上で旅を楽しみたいものです。
119番通報してから救急車が事故現場に到着するまでの時間は、全国平均で8.6分です。これは幹線道路や市街地の話であって、人里離れた山中の交通事故や縦走登山中の遭難事故の場合は、救助隊の到着にかなりの時間を要します。心肺停止や大量出血は短時間で死に至るため、可能な限り自力で対応しなければなりません。応急処置のスキルと救急セットがあれば、最悪の状況に陥っても高い確率で命を救えます。たとえ重傷ではなくとも、適切な救護により被害を最小限に抑えられるのです。
こういうことは書きたくなかったのですが、近年、一般市民を無差別に殺傷する凶悪犯罪が多発。ツーリングや登山中よりも、電車内や日常生活のほうが危険と感じます。爆弾テロや銃乱射事件が発生する欧米よりは平和でしょうが、突然襲撃されて重傷を負う可能性が日常に潜んでいるのが現実です。また、銃や機械を扱う仕事に従事している場合は日常における死亡事故の危険性が跳ね上がります。アウトドア活動に限らず、常に事件・事故を想定し、救急セットを備えておくのが望ましいです。
救急セットは自分で作成するのが基本です。市販の救急セットは内容が充実しているように見えても致命的な事態には対応しておらず、安価なセットに至っては品質が極端に劣っており命を救うことができません。それよりも日常生活や旅先で起こりうる事故・災害について真剣に考え、どのような応急処置を施すのかシミュレーションしてみて、救急用品を厳選して自作したほうが有意義で実用的です。私の場合は仕事の事情もあり、米軍のファーストエイドキット(IFAK)を参考に作成しました。
当然ながら、救急用品だけ揃えて持ち歩いても全く意味はありません。訓練や講習を受けて応急処置のスキルを身に付けることで、適切な救護が可能になります。一般の方は消防本部または日本赤十字社が主催する講習を受け、心肺停止や大量出血、骨折等の怪我に対する応急処置の基礎知識と実技を学ぶことができます。医学の進歩によって処置方法や救急用品は日々改善されていますから、講習後も情報を更新して練習を欠かさないのが理想的。非常時に備えるのはとても大事なことです。
このページの救急セットは軍隊向けのIFAKに基づきます。一般向けの救急セットとはかけ離れており、アウトドア活動においてもオーバースペックです。一部の医療器具の使用には十分な訓練と理解が必要であり、簡単に扱えるものではありません。携行・使用を推奨するものではないとご理解の上でお読みください。ページ内容を鵜呑みにして救急用品を揃え、何らかのトラブルに見舞われたとしても、私は一切の責任を負いません。絶対に救急セット作成の参考にしないよう、強くお願いします。
軍隊向けの救急ポーチ。仕事用に揃えたIFAKをツーリングとバックパッキングに転用しました。
自転車旅を始めた頃、応急処置といえば絆創膏のみ。旅先で転倒して怪我したり、旅人を手当てする状況が何度もあり、アウトドア用の救急ポーチを買って最低限の救急用品を揃えました。その後、防衛の仕事で支給された救急品が絶望的に頼りないことに危機感を覚え、米軍のIFAKを参考に実戦的なIFAKを作成。止血帯・止血ガーゼ・止血包帯の3点セットを収納する小型IFAK、3点セット+様々な救急用品を収納する大型IFAKの2つを用意しました。このポーチは大型IFAKになります。
一般的なIFAKポーチより大容量で、ゴムバンドやポケットで各種の救急用品をシステマチックに収納できるのが売りの製品。生地は現場での酷使に耐えうる"CORDURA"で、ポーチ内が確実に保護されます。多少の撥水性は備えますが防水仕様ではありません。救急用品は全て小型のジッパーバッグに収納した上で、赤と緑のビニールテープをラベルとして貼り、品目名、注意事項、有効期限などを明記します。これは現場での使い勝手を少しでも向上するための切実な工夫です。
もちろんMOLLE/PALS規格に対応しており、同規格のウェビングを備えたボディアーマーやバックパックに装着可能です。ポーチ前面にもMOLLEウェビングがあり、トラウマシザーや止血帯を外付けできます。アーマーや弾帯用としては大きすぎるので、私はアサルトパックの側面に装着しました。ジッパープルの端末にコードロック(ITW Nexus Zipcord)を取り付け、ジッパーの操作性を向上。ベルクロパネルには識別用のパッチ(Condor Medic Patch)を貼りました。
本製品の最大の特徴は、MOLLEパネルとポーチ本体がベルクロで脱着できること。応急処置を施す際、アサルトパックからポーチを外して中身を広げたり、持ち運んで救護できます。私は大容量のポーチを求めて買ったため、この機能にはあまり必要性を感じませんでした。アウトドア用のザックにも工夫すれば取り付けられますが、徒歩旅では凄まじく仰々しい見た目になってしまうため、基本的にはMOLLEパネルを外した状態で防水スタッフバッグに入れて、ザック底部に収納しました。
銃撃・砲爆撃・IED攻撃による重傷を想定して作成したこともあり、ツーリングや山歩きで起こりうる大抵の怪我に対応。切り傷・擦り傷・切断・骨折・捻挫・低体温症・虫刺され等に自力で対処できるほか、傷病者の救護に欠かせない保護具も備えます。入手しやすく使いやすい実用的な救急用品を厳選し、軽量化は一切考慮せず必要なものは全て入れました。このような救急セットを用意するのは決して大袈裟ではありません。もし事故が起きてしまった時、命を守るための最終手段になります。
様々な怪我に対応する反面、重くて嵩張る欠点があるのも事実。長期間のツーリングとバックパッキングでは事故に備えた救急用品が必要ですが、日帰りのハ イキングや街歩き、普段用の救急セットとしては明らかにオーバースペック。デイパックや中型ザックに入れると容量を圧迫し、パッキングが大幅に制限されま す。また、大型ザックの底部にポーチを収納すると、非常時に素早く取り出して処置できない、という致命的な問題がありました。これではIFAKの意味を成しません。
そこで、大型IFAKに替わるコンパクトな救急セットを作成。日本赤十字社 救急ポーチに最低限の救急用品を入れ、普段用に携行するようになりました。長旅では各種の救急用品が必要になるため従来通り大型IFAKを用意しましたが、2つのポーチを使い分けるのは決して合理的ではありません。後に救急セットの運用を大幅に見直し、使い勝手に優れた5.11 UCR IFAK Pouchを基本のIFAK、EXPED Vista Organiser A5を追加のポーチとする態勢を確立。大容量のIFAKは役目を終えました。
日本赤十字社の講習を受けると貰える救急ポーチ。最低限の救急用品を入れたIFAKです。
大容量のIFAK(戦人 メディックポーチ)に替わるコンパクトな救急セットとして作成。直ちに処置しなければ死亡する心肺停止や大量出血を想定した小型IFAKになります。IFAKに必須の止血帯・止血ガーゼ・止血包帯の3点セットが入る程度の容量であり、デイパックや中型ザックにポーチを収納しても嵩張らないのが長所です。ジッパープルはモンベル 張り綱 3mmとITW Nexus Zipcordに交換。ベルトループにはカラビナ(ITW Nexus Tac Link)を取り付け、操作性・携行性を向上しています。
このポーチは普段用。長期間のバックパッキングでは各種の救急用品が必要になるため、従来通り大型IFAKを用意しました。しかし2つのポーチを使い分けるのは決して合理的ではなく、ポーチの容量が小さすぎて救急用品を取り出しにくい問題もありました。後に救急セットの運用を大幅に見直し、使い勝手に優れた5.11 UCR IFAK Pouchを基本のIFAK、EXPED Vista Organiser A5を追加のポーチとする態勢を確立。短い役目を終えました。
軍隊・警察向けの救急ポーチ。救急セット合理化の一環で導入した基本のIFAKです。
危険な現場における実用性を徹底的に追求した製品。直ちに処置しなければ死亡する心肺停止や大量出血に対応する救急用品の収納・携行に適します。ポーチ上部のドラッグハンドルを引き下ろすと両サイドのジッパーが開き、内部に素早くアクセスできるのが大きな特徴。ポーチのフラップは大きく開くため、内容物を見つけやすく、取り出しやすいです。ハンドルで開放するから別段意味はありませんが、ジッパープルは赤いコードとITW Nexus Zipcordに交換しています。
生地は耐久性に優れる1050Dナイロン。防水仕様ではありませんので、底部に水抜きの穴が設けられています。容量は見た目以上に大きく、IFAKに必須の止血帯・止血ガーゼ・止血包帯の3点セットが余裕で入ります。内部に仕切りを備えており、トラウマシザーやマーカーペンを挿せるスロットもあります。フラップを開いた際に救急用品が落ちないよう赤いショックコードが付属しますが、必要ないので外しました。戦人 メディックポーチほど大型ではなく、小さすぎることもない絶妙なサイズ感です。
背面はMOLLE/PALS規格に対応する"SlickStick"仕様。同規格のウェビングを備えたボディアーマーやバックパックに装着可能であり、車両のヘッドレストに掛けるストラップも付属します。ポーチ単体で使用する際にドラッグハンドルを引きやすくするため、背面のウェビングに「掴み」としてカラビナ(ITW Nexus Tac Link)を取り付けました。このような工夫が使い勝手を高めます。
ポーチ前面と側面にもMOLLEウェビングがあり、トラウマシザーや止血帯ポーチを外付けして負傷時の即応性を高めることができます。この写真はあくまで装着例。私はコンパクトなIFAKを目指しており、上述したように全ての救急用品をポーチ内に収納するスタイルです。ベルクロパネルには識別用のパッチ(Condor Medic Patch)を貼りました。
SlickStickは汎用性が高く、MOLLEウェビングだけでなくザックのストラップに取り付けたり、ベルトポーチとして使うことも可能です。ザック後面に装着するとアクセス性は格段に高まりますが、徒歩旅では仰々しい見た目になりますので基本的にはザック内に収納します。デイパックに詰めると多少は嵩張るものの、ポーチ自体の機能性が非常に優れているため、この程度の嵩張りは許容できます。
日常生活と短期間の旅では、基本のIFAKとして本ポーチのみ携行。長期間のバックパッキングでは追加の救急用品を収納したEXPED Vista Organiser A5、止血帯を収納したモンベル スタッフバッグを携行する態勢を確立。基本のIFAKと追加のポーチで機能が重複しすぎないよう内容物を厳選し、合理的な救急セットの運用を実現しました。まだまだ改善の余地はありそうです。
防水仕様の半透明ジッパーポーチ。追加の救急用品を収納します。
パッキング合理化の一環で導入したオーガナイザーを救急セットに転用。TPUメッシュラミネートと止水ジッパーによって防水性と耐久性を両立しており、無理なパッキングでも破れる心配がなく、防水の小物入れとして非常に優れた製品です。ジッパープルは蛍光反射コード 2.5mmとITW Nexus Zipcordに交換済み。オーガナイザーとしての使用感はパッキング用品のページで紹介します。
このポーチの役割はIFAK(5.11 UCR IFAK Pouch)の補完です。普段用の救急セットには必要ない副木や毒虫対策の器具、スペアの感染防護やガーゼ・包帯などの救急用品を詰め込み、長期間のバックパッキングの際に追加のポーチとして携行します。あくまで補完用であり、IFAKのような即応性や機能性は求めません。大型ザックに収納しても嵩張らず、実用性な携行手段だと思います。
樹脂製の防水ケース。風呂セットとして使っていたものを、機械・設備関係の職場の救急箱に転用しました。「労働安全衛生規則」では事業所に救急用品を備えて使用法を周知するよう規定されていますが、町工場で徹底されているかは怪しいものです。私の職場にも古びた救急箱しか置いていなかったため、工作機械や重量物を扱う現場で起こりうる労働災害を想定して、IFAKに準じて実用的な救急セットを用意しました。救急箱を示すラベルを貼って目立つ場所に設置。自分の命は自分で守ります。
ニトリルゴム製の手袋。応急処置の際、傷病者の血液や体液が付着するのを防ぐ保護具です。極薄の素材ながら突き刺しや摩耗にある程度耐えられ、先端に滑り止めの凹凸加工があって作業性に優れます。素手で救護を行うと、他人の血液に触れて病気に感染する恐れがあり、非常に危険。周囲の安全を確認し、ニトリルグローブを嵌めてから応急処置を施すのが基本です。清潔な状態の手袋をすぐ取り出せるよう、小型のジッパーバッグに入れてポーチの上部に収納します。
軍隊向けの黒いニトリル製手袋。用途と性能は一般向けのニトリルグローブと同じです。戦闘中に目立ちにくいBlack Talonは米軍や警察で広く使用されていますが、黒い手袋に赤い血液が付着しても分かりにくいのが欠点です。隠密性を求められる任務ならともかく、応急処置の際はカーキ色のNAR Bear Claw Glove Kitか、視認性に優れる青・紫・半透明のニトリルグローブのほうが実用的だと思います。
パッキングに多用するジッパーバッグ。応急処置の際に使ったガーゼや手袋等を隔離するために使います。傷病者の血液や体液が付着した物品を現場に放置すると、誰かが素手で片付けようとして病気に感染する恐れがあり、非常に危険です。処置が終わったら速やかに使用済みの物品をジッパーバッグに入れ、密閉隔離した状態で廃棄します。
人工呼吸用のマスク。心肺停止した傷病者の口に被せて、逆流防止弁を備えたマウスピースから息を吹き込みます。胸骨圧迫と人工呼吸を組み合わせた心肺蘇生は極めて有効な救命処置ですが、新型コロナウイルスが蔓延する2022年現在、「成人には人工呼吸を行わず胸骨圧迫とAEDを用いる」「子供の場合は人工呼吸をする意思があれば実施する」との指針が厚生労働省から発表されています。使用の際はコロナ感染に対する十分な注意が必要です。
70%イソプロパノール含浸不織布。分かりやすく言うとアルコールを染み込ませた消毒用のガーゼです。応急処置に用いた器具や身の回りの装備には傷病者の血液や体液が付着している可能性がありますので、このガーゼで消毒します。最近は傷口を消毒しない治療法が普及しつつあり、私も傷口用の消毒薬は用意しませんが、器具を消毒するためのアルコールは必要。これも感染防護の一種です。
普通の絆創膏。日常生活から旅先まで、最も使う機会の多い救急用品です。通常の絆創膏と、濡れても剥がれにくい防水仕様の絆創膏の2種類を用意しています。
湿潤療法(モイストヒーリング)の機能を持つ絆創膏。傷口を体液で潤った状態に保ち、自然治癒を促す救急用品です。防水仕様のポリウレタンフィルムと、体液を吸収して膨らむポリマーのハイドロコロイド素材によって構成され、適切に使用すれば傷が早く綺麗に治ります。私はキズパワーパッドを徒歩旅で生じやすい足のマメ・靴ずれの処置に使用。指の切り傷程度は普通の絆創膏で間に合います。
湿潤療法(モイストヒーリング)の機能を持つシート。製品名は包帯ですが、実際には傷口を体液で潤った状態に保つハイドロコロイド素材そのもの。シートの上からニチバン 防水フィルム ロールタイプを貼ることで、バンドエイド キズパワーパッドと同様の効果を得られます。キズパワーパッドでは対応できない大きい擦り傷を想定し、適度なサイズにカットして携行。2020年には一般医療機器扱いになったプラスモイスト ハイドロコロイド包帯 アドバンスに更新されました。
極薄の防水フィルム。完全防水で粘着力と伸縮性に優れるため、汗濡れや激しい運動で剥がれにくく、皮膚にも優しいです。瑞光メディカル ハイドロコロイド包帯をカバーする用途に最適なフィルムであり、傷口の自然治癒を水やバイ菌から保護する役割を担います。ハイドロコロイド包帯と同じく、適度なサイズにカットして携行します。
綿100%の清潔なガーゼです。滅菌処理を施した上で個包装されており、傷口の保護に最適。ガーゼの固定には伸縮包帯・三角巾・サージカルテープを用います。絆創膏ではカバーできない大きさの傷を想定し、大小2種類のガーゼを用意しています。
伸縮性と通気性に優れる包帯。滅菌ガーゼを固定する用途に適します。固定だけならサージカルテープでも代用できる上、出血の処置にはガーゼと包帯が一体になったEmergency Bandage 4"を優先して使います。現在の救急セットには不要と思いつつ、念のため備えています。
直角二等辺三角形の丈夫な布。汎用性の高い救急用品であり、体の各部の怪我に対応します。出血箇所に当てた滅菌ガーゼを固定して縛る圧迫包帯止血法や、骨折の際に腕を吊ったり副木を固定するなど用途は色々。状況に応じて適度な大きさに折りたたみ、負傷箇所を保護するように上手く巻いて結ぶことで大きな効果を発揮します。但し、練習を欠かさなければすぐに使用法を忘れてしまいます。
圧迫包帯止血法は三角巾の代表的な使い方ですが、止血に関してはガーゼと包帯が一体になり直接圧迫止血の機能を持つEmergency Bandage 4"のほうが遥かに優れます。現場で三角巾の適切な使い方を思い出したり考えている余裕はありません。汎用性の高い三角巾を試行錯誤して使うより、止血専用の救急用品を使ったほうが素早く処置できます。私の場合、三角巾は補助的な手段という位置付けです。
軍用のガーゼ付き包帯。イスラエルで開発されたことから"イスラエルバンデージ"とも称します。従来のガーゼ付き包帯に直接圧迫止血の機能を付与した画期的な包帯として、米軍を始めとする世界各国の軍隊と警察で採用。大量出血による失血死を防ぐ止血帯・止血ガーゼと合わせて、現代のIFAKの必需品になりました。エマージェンシーバンデージを備えない救急セットは実用的と言えません。
大量出血に対応する4インチ(10cm)x7インチ(18cm)の厚手の滅菌ガーゼ、63インチ(160cm)の伸縮包帯、包帯を掛けるフック(プレッシャーアプリケーター)が一体化された構造。銃撃やIED攻撃による出血の際、傷口にガーゼを当て、包帯をフックに掛けて折り返します。強く締めながら包帯を巻き、端末のフック(クロージャーバー)を掛けて固定すると、傷口を止血する応急処置が完了します。
4インチのバンデージは手足や頭部の負傷に対応します。四肢切断や凄まじい出血の場合は止血帯・止血ガーゼを使うとして、それ以外の出血はエマージェンシーバンデージ単体で抑止できると思われます。腹部の負傷や切断箇所を覆う用途に対応する大型のモデルもありますが、個人用の救急用品としてはコンパクトな4インチ仕様が一般的です。私も携行性を重視して4インチのFCP-01を選びました。
バンデージは真空パックされており、使用するまではコンパクトかつ清潔な状態に保たれます。パッケージには開封箇所が分かりやすく表示され、裏面にはイラスト付きの使用法が記載。ガーゼの反対側を示すラベルや、包帯が垂れ下がらないための仮縫いなど、混乱する現場で素早く確実な処置が行えるよう配慮が行き届いています。止血帯と同じく、片手を負傷した状態でも扱える設計です。
本来は軍用品ながら、実用性の高さから民間向けの救急用品としても普及する止血バンデージ。十分な訓練が必要な止血帯に比べると格段に扱いやすく、救急セットに入れておくと非常時に役立ちます。同等品としてNAR Emergency Trauma Dressing、H&H H-Bandage、TMS Olaes Modular Bandageなども存在しますが、日本で最も入手しやすいのはエマージェンシーバンデージです。
綿100%の清潔なガーゼです。4.5インチ(11.4cm)x4.1ヤード(374.9cm)の滅菌ガーゼが真空パックで小さく圧縮され、ポーチに複数入れても嵩張らないのが特徴。現場で素早く開封できるよう、切り口は赤で強調されています。ガーゼは伸縮性と吸水性に優れ、傷口から溢れ出る血液を拭き取る用途に最適。止血ガーゼと組み合わせたり、ガーゼを当てた上からガーゼ付き包帯(Emergency Bandage 4")を巻くことも可能であり、IFAKに欠かせない救急用品の一つです。
止血機能を持つガーゼ。血液凝固作用がある天然高分子"キトサン"から成る止血剤"Celox"の顆粒でコーティングされた、8インチ(20.3cm)四方の特殊な止血ガーゼです。大量出血の際、傷口にガーゼを当てて圧迫すると表面の血液が固まり、止血効果を得られる仕組み。止血帯(SOF Tactical Tourniquet 1.5")、ガーゼ付き包帯(Emergency Bandage 4")とともにIFAKに常備しましたが、幸いなことに開封しないまま使用期限が切れました。
止血機能を持つガーゼ。アルギン酸カルシウムの不織布をポリエチレンの防漏シートで覆った2層構造です。出血箇所に当てると、不織布が血液と体液を吸収してゲル化し、止血効果と湿潤状態を得られる仕組み。毛羽立った不織布は傷口に固着しにくく、表面の防漏シートによって体液が漏れにくい優れた設計です。サイズは8cmX30cmと大きく、日常生活や旅先で起こりうる様々な怪我に対応。使用時は傷口の大きさに合わせてトラウマシザーでカットします。
ヘモスタパッドの固定には伸縮包帯・三角巾・サージカルテープを用います。大量出血の際は、シートの上から直接圧迫止血の機能を持つガーゼ付き包帯(Emergency Bandage 4")を巻くと効果が増すと思います。軍用のIFAKには上述した捩じ込み式の止血ガーゼが必要ですが、一般的な救急セットには傷口を覆うだけのヘモスタパッドが適します。扱いやすく止血効果の高いヘモスタパッドとエマージェンシーバンデージは、実用性重視の救急セットの必需品と言えます。
ターニケットとも。米軍がアフガニスタンとイラクでテロとの戦いを継続し、多くの死傷者を出し続ける中で開発された止血専用の医療器具です。戦場において銃撃・砲爆撃・IED攻撃を受けた際の大量出血…特に四肢切断による失血死を防ぐ最良の手段であり、米軍を始めとする世界各国の軍隊と警察で各種の止血帯が採用されています。止血帯・止血ガーゼ・止血包帯の3点セットは、現代のIFAKの必需品です。実用的なIFAKを支給しない軍隊は、まともな組織ではないと断言できます。
大量出血や四肢切断が起きるのは戦場だけではありません。銃を扱う狩猟、チェーンソーを扱う林業、重機を扱う建設業、工作機械を扱う製造業など、あらゆる職場に死亡事故の危険が潜みます。欧米では日常的に爆弾テロや銃乱射事件が発生する事情もあり、一般向けに軍用止血帯が普及。嫌な話ではありますが、惨事のたびに止血帯の有効性が実証されています。日本赤十字社では2019年から救急法講習に止血帯の実技を追加し、一般の方が失血死を防ぐ止血帯の使用法を学ぶ時代になりました。
止血帯の使用には重要な注意事項もあり、適切に止血するのは難しいです。訓練や講習を一切受けていない者が扱っても止血効果は得られず、むしろ状態を悪化させて死亡に繋がる恐れがあります。止血帯は四肢切断や凄まじい出血に対する最終手段であって、大抵の出血は止血ガーゼか止血包帯で抑止できると思います。そういった事情を理解しないまま、安易に止血帯を持ち歩いて怪我人に使うのは絶対にやめてください。安価で低品質な偽物の止血帯が流通していることにも注意が必要です。
以下で紹介するC-A-T、SOFTT-W、SAM XTは止血帯の代表格です。3つとも米軍の専門機関で推奨されており、止血効果は実証済み。どの製品を選定するかは所属組織の方針や個人の好み次第です。各製品の特徴や長所・短所を概観しますが、具体的な止血法の解説は行いません。かつて兵士だった私が機械加工の仕事やアウトドア活動で必要と感じて備えているだけであって、万人向けに止血帯の日常的な携行・使用を勧めているわけではありません。あくまで装備資料という体裁で掲載します。
通称C-A-T。2005年に米軍で導入された革新的な軍用止血帯です。アフガニスタンとイラクの戦訓を元に改良を繰り返し、その実用性から軍隊だけでなく警察や民間にも普及。世界で最も標準的な止血帯になりました。私が持っているモデルは第6世代(Gen 6)です。
直ちに止血しなければ死亡する大量出血に際し、腕または脚にバンドを通して強く締め込み、ベルクロを貼り合わせて保持。ロッドを回すことでバンドが更に強く締まり、血管が圧迫されて出血が止まる仕組みです。クリップにロッドを掛けて余ったバンドを入れ、"TIME"と記された白いストラップを被せてマーカーペンで止血時刻を書き込み、後送されて手術を受けるまで持ちこたえます。この止血帯の普及により、戦場で手足を吹き飛ばされる重傷を負っても、命だけは助かるようになりました。
バンドの端末は視認性に優れる"Red Tip"仕様。米軍では赤いタブが見えるように肩ポケットに収納したり、ボディアーマーに取り付けて負傷時にアクセスしやすい工夫を行っています。バンド自体は幅広の1.5インチ(38.1mm)で皮膚に食い込みにくく、ロッドの下は樹脂製プレートで補強されて安定度も良好。片腕を負傷した際は、もう片方の手だけで扱えるよう設計されています。但し、バンドを通すバックルは片手・両手操作によってルートが異なり、現場では混乱を招きます。
バンドのベルクロが濡れたり泥で汚れると貼り合わせにくい、樹脂製のロッドを力任せに回すと折れる、といった欠点が指摘されているものの、導入以来15年以上の使用実績があり、優れた止血帯であることに変わりはありません。2015年には改良型のC-A-T Gen 7が登場。TIMEタグがグレーになったほか、ロッドとクリップが破損防止のために太くなり、バンドを通すバックルのルートを一本化するなど、従来の欠点が大幅に改善されました。軍隊や警察では切り替えが進み、現在はGen 7が主流です。
日本赤十字社の救急法講習で用いる止血帯もC-A-T Gen 7であり、今後は一般の方が扱う機会が増えると思います。私はSOFTT-WとSAM XTを携行しますが、世界標準であるC-A-Tを適切に使えることが必須条件です。上述したように、最近では安価で低品質な偽物のC-A-Tがネットショップ等で流通しています。粗悪品を安易に使用すると怪我を悪化させる恐れがあり、非常に危険です。訓練または講習を受け、止血帯の注意点と使用法をしっかり理解した上で正規品を携行するのが基本です。
通称SOFTT-W。C-A-Tに次いで普及する軍用止血帯です。バンドが1インチ(25.4mm)だったSOFTT-NHの改良型であり、初期型から数えて第3世代(Gen 3)に相当します。仕事用にIFAKを作成する際、C-A-Tより信頼性が高いとされる特殊部隊向けのSOFTT-Wを選びました。
使用法はC-A-Tとほぼ同じです。腕または脚にバンドを通して強く締め込み、ハンドルを回すことでバンドが更に強く締まり、血管が圧迫されて出血が止まる仕組み。三角環にロッドを掛け、バンドの裏面に縫い付けられたTIMEタグに止血時刻を書き込むと処置完了です。C-A-Tの訓練を受けて止血帯の機能や注意事項を十分理解した者であれば、SOFTT-Wは問題なく使いこなせると思います。
SOFTT-Wの特徴はバンドとハンドルの仕様です。1.5インチ(38.1mm)のバンドを金属製のスライダー付きバックルで保持するため、ベルクロが濡れたり汚れたりして貼り合わせられない、という致命的な事態が起こりません。ロッドは樹脂ではなくアルミ製であり、力任せに回しても折れない堅牢な仕様です。ベルクロとロッドクリップを備えないシンプルな作りなので、C-A-Tより軽量コンパクトに折り畳むことが可能。ボディアーマーに装着した際に嵩張らないのもSOFTT-Wの大きな強みです。
ロッドに施された滑り止めのローレット加工、バンドの裏側に縫い付けられた滑り止めのゴム、切り離し可能なバックルなど、C-A-Tとは異なるアプローチで現場における実用性と信頼性を追求したSOFTT-W。銃乱射事件の際の報告によると必ずしもC-A-Tより優れているわけではないようで、片手操作の場合はバンドがバックルのスライダーに引っかかって締めにくい欠点もあります。とは言え米軍ではC-A-TとSOFTT-Wを併用しており、優劣を付けなくとも実用的な止血帯であることは明らかです。
私は最初にSOFTT-Wを選び、仕事や旅先で一度も使うことなく携行しました。2019年には改良型のSOFTT-W Gen 4が登場。普段用の止血帯はGen 4に更新するも、古いGen 3は機械加工の現場でポーチ(NcSTAR VISM MOLLE Tourniquet Pouch)に入れて携帯しています。
2019年に登場した軍用止血帯。SOFTT-W Gen 3の改良型であり、初期型から数えて第4世代になります。使用法は従来のSOFTT-Wと同様であり、競合製品であるC-A-T風のクリップが追加されました。素材やパーツがスリムになり、アルミ製ハンドルは細長く溝の入ったデザインに変更。SOFTT-Wの特徴である堅牢性は維持しつつ、Gen 3より15%もの軽量化を実現しています。最近の軍用装備には軽さが求められており、ボディアーマーに装着する止血帯も少しでも軽いほうが望ましいです。
C-A-TやSAM XTより軽量コンパクトであることから、普段用の止血帯としてSOFTT-W Gen 4を導入。古いGen 3は機械加工の現場で携帯しています。ところが2020年には第5世代(Gen 5)のSOF Tourniquetが発表され、従来の欠点であったバックルとバンドの引っ掛かりが改善。Gen 4は僅か1年で旧モデルになってしまいました。これでも十分すぎるほど実用的であり、更なるタクティカルアドバンテージを求めて買い換える気もありませんので、当面はGen 4を携行します。
軍隊・警察・救急隊向けの止血帯。C-A-TとSOFTT-Wが普及する中、両者の長所を取り入れた革新的な止血帯として2017年に登場しました。ベルクロ付きの1.5インチ(38.1mm)のストラップ、ウィンドラスを回してフックに掛ける仕組みなど、デザインと使用法は最も標準的なC-A-Tを踏襲。ただの改良ではなく、独自の機能を組み込んで操作性と信頼性を向上しています。2019年には米軍の専門機関が推奨する止血帯に追加。SOFTT-Wを携行していた私も、仕事と旅用にSAM XTを加えました。
SAM XTの最大の特徴は樹脂製の"TRUFORCE"バックルです。腕または脚にストラップを通して強く締め込むとバックルに圧力が掛かり、クリック音とともに突起が飛び出てストラップの穴に嵌まる仕組み。この優れた機構のおかげで、ストラップが適切に締め付けられた状態で確実に固定され、ウィンドラスによる止血効果が最大限に高まります。ベルクロが濡れたり汚れたりして貼り合わせられない、ストラップの締め込みが足りなくて止血できない、といった致命的な事態は起こりません。
ウィンドラスはSOFTT-Wと同じくアルミ製。滑り止めのローレット加工が施され、力任せに回しても折れない堅牢な仕様です。巻き上げ後はC-A-Tに似たCフックにウィンドラスを掛け、余ったストラップを入れてベルクロで保持。グレーのTIMEバンドを被せて止血時刻を書き込むと処置が完了します。ウィンドラスとフックは樹脂製の"TRUFLEX"プレート上に設けられており安定度は良好。C-A-Tの使用感に馴染んだ者がSAM XTを扱うと、現場に配慮した仕様に感動すると思います。
唯一の欠点はコンパクトに折り畳めないこと。止血効果を高める特徴的なバックルによって大柄になり、一般的な止血帯ポーチには収まりません。最近ではSAM XT対応のポーチも登場していますが、ボディアーマーに装着する場合はC-A-TやSOFTT-Wに比べると嵩張ります。大型のIFAKポーチやEMTバッグに収納するなら全く問題ありませんので、これについては適材適所。操作性と信頼性は最高レベルですから、非常時に失血死を防ぐことを考えると、嵩張るぐらいは許容できます。
私が常備する止血帯を列記すると…機械加工の現場ではポーチにSOFTT-W Gen 3、救急箱にSAM XTを収納。普段用のIFAKにSOFTT-W Gen 4、バックパッキング用のスタッフバッグにSAM XTを収納。できれば一度も使わないまま人生を終えたいですが、直ちに止血しなければ死亡する大量出血が起きてしまった時は、信頼性の高い軍用止血帯が命を救ってくれるでしょう。
止血帯の携行に特化した軍隊向けのポーチ。MOLLE/PALSウェビングを備えるボディアーマーやチェストリグの任意の箇所に装着可能です。縦横2方向の取り付け用ストラップがあり、横方向はベルトループとして使用できます。私は旋盤などの工作機械を扱う機械加工の現場において、作業服のベルト(5.11 1.5" TDU Belt)に横向きに装着。直ちに処置しなければ失血死するような事故が起きた際、ポーチから止血帯を取り出して使用できる態勢です。もちろん作業場にはIFAKに相当する救急箱もあります。
止血帯ポーチの種類は多く、負傷時に素早く取り出せるように様々な機能を備えた製品があります。このポーチは止血帯を差し込み、赤い"TQ"の刺繍が施されたエラスティックフードを被せるだけのシンプルな構造です。止血帯を引き抜く仕組みやトラウマシザーを挿すホルダーを備えないからこそ、ベルトに装着しても嵩張りにくい利点があります。ポーチのサイズはC-A-TとSOFTT-Wに対応し、SAM XTは収納できません。現場では常にSOFTT-Wを入れて携帯し、安全第一の精神で機械を扱います。
テント(モンベル ムーンライトテント 1型)に付属するペグのスタッフバッグ。止血帯の携行に適した容量と強度を備えます。IFAKをザック内に収納すると、非常時に素早く取り出して処置できないという致命的な問題があります。スタッフバッグに入れた上でザックのボトルポケットに挿入すると即応性が高まり、IFAKポーチを外付けするような物々しさを回避可能。止血帯を携行する手段の一つです。
軍隊向けの医療用ハサミ。普通のハサミとは異なり、ハンドルと刃に角度が付いているのが特徴です。この形状は頑丈な戦闘服やジャケットを切り裂く用途に適しており、刃先には皮膚に刺さらないようガードも設けられています。混乱する現場で応急処置を施す際、服のボタンやジッパーを外すなどの無駄な動作をしている暇はありません。傷口周辺の服を速やかに切除して処置にかかります。
ノーブランドの安物ではありますが、刃はステンレス鋼で切れ味も申し分なし。大柄なタクティカルグローブを嵌めた状態でも扱いやすく、服や装備だけでなくガーゼやテープを切る汎用のハサミとしても便利です。 現場ではボディアーマーやポーチのMOLLEウェビングに挿す携行方法が一般的で、行動中に紛失しないよう、コイルランヤードやNAR Scissor Leashを用いて脱落防止を施します。
トラウマシザーにストラップカッター等の機能を加えたLeatherman Raptor、SOG ParaShearsなる製品も存在します。見た目は格好良いですが、ハサミとカッターにマルチツール的な多機能性や折り畳み機構は求めておらず、血液がこびり付いた際の洗浄が面倒そうと判断して買いませんでした。軍隊でもアウトドアでも、応急処置にはシンプルなトラウマシザーで十分間に合います。
軍隊向けのレスキュー用カッター。420HCステンレス鋼の鋭いストラップカッターを備え、応急処置に際して戦闘服や装備を素早く切り裂くことができます。樹脂製のグリップは大柄なタクティカルグローブを嵌めた状態でも指を掛けて握りやすく、脱落防止のランヤードホールにもなります。刃先を保護するシースにはMOLLE/PALSウェビングに対応するMALICEクリップとベルトクリップが付属。米軍ではアクセスしやすいボディアーマーの胸部に装着する例が多いです。
カッターの反対側にはガラス破壊用のグラスブレーカー付き。車を運転する際に常備すれば、事故の際に速やかにシートベルトを切り、窓を割って脱出できると思われます。自転車と徒歩で旅をする私には全くもって無縁の機能ですが、車両事故に遭遇した際は救助の役に立つでしょう。グラスブレーカーの無いシンプルな製品としてはBenchmade 7 Hookがあり、こちらも米軍で多用されています。尚、大型で力を入れやすいGerber Crisis Hook、Benchmade 8 Hookなどの製品もあります。
コンパクトで携行性に優れ、非常時に素早く使用できるのが本製品の長所。その一方で汎用性には欠けており、トラウマシザーのようにガーゼやテープを切る用途には適しません。旅先で何かのパッケージやロープを切ることを考えると、ストラップカッターだけでは不十分です。レスキュー用の即応ツールとしては間違いなく優れていますが、現場では汎用ツールとしてのハサミも必要。バックアップを兼ねて両方携行するのが望ましいです。
綿布の粘着テープ。強度が高く粘着力に優れており、ガーゼの固定に使うと汗濡れや激しい運動でも剥がれにくいです。適度な通気性はあるものの伸縮性は皆無。手では千切りにくいので、使用の際はトラウマシザーでカットします。ガーゼや包帯を固定する用途にはサージカルテープ-21Nが適しているそうですが、私は粘着力重視でこのテープを選定しました。
筋肉と関節をサポートするキネシオロジーテープ。粘着力・伸縮性・通気性に優れるだけでなく、撥水加工も施されており、汗濡れや激しい運動でもテープを巻いた状態を維持できます。手で千切ることはできませんので、使用の際はトラウマシザーが必要です。運動時の負担軽減や怪我予防など色々な機能を有しますが、私は何もしなくても長距離を歩けるから、サポート目的のテーピングは行いません。
このテープを使う用途は、徒歩旅におけるマメと靴ずれの予防です。足の指や踵は、サイズの合った靴や厚手の5本指ソックスを履いてもマメや靴ずれが生じやすく、歩き続ける上で大きな負担になります。そこで、最初から指と踵にキネシオテープを巻いて保護。これなら皮膚が確実に保護され、長距離を歩いてもマメが生じません。本来の用途からは外れますが、保護テープとしては実に有用。小型のジッパーバッグで日数分を小分けして携行します。
アルミ蒸着ポリエステル製のシート。エマージェンシーブランケットとも称します。
遭難時に風雨に曝されたり、気温が低下して低体温症に陥る最悪の事態を防ぐのが主な用途。かなり薄い素材ながら断熱性・防風性・防水性に優れており、毛布のように体を包むことで保温効果を得られます。通気性は全くありませんので、寒い環境で長時間使用すれば結露が避けられません。風でめくれると効果を失うため、体を包んだ状態を維持する工夫も必要です。付け加えると、動くたびにシートがガサガサ音を立てるのは耳障りです。
光を反射する素材のため、捜索中のヘリコプターから発見されやすいという副次的な効果もあります。遭難対策の装備としては間違いなく有効ですが、あくまで非常手段であって常用するものではありません。山歩きでは雨天対策のレインウェアや予備の防寒着(ダウンジャケットやフリース)を用意し、野宿する際は暖かく快適なシュラフを使うのが鉄則。万全の装備を整えた上で、バックアップのサバイバルシートを携行するのです。
骨折・捻挫の際に使用する副木。アルミの薄板を皮膚に優しいウレタンフォームで覆った構造です。負傷箇所に合わせて成形し、サージカルテープやビニールテープで固定します。トラウマシザーでカットできるため、大きいシートから指用の副木を作ることも可能。各種サイズが用意されており、手足の骨折には36インチ(91.4cm)が最適なのですが、ポーチに入れて携行するには嵩張るため18インチ(45.7cm)を選びました。軍用モデルもあり、その有効性は米軍で実証されています。
ポイズンリムーバー。スズメバチ等の毒虫に刺された際、毒を除去できるという器具です。先端のカップはリバーシブルで大小の傷口に対応。カップを押し当ててレバーを引くと、体内の毒が吸い出される仕組みです。実際に使ったことはないので有効性は不明。アウトドアの救急用品の定番として流通しているものの、効果を疑問視する意見も多いです。ヘビ毒に対しては効果がないどころか、組織損傷を引き起こす危険性まで示唆されています。安易な使用は推奨されません。
ダニを除去する器具。有害なマダニに噛まれた際に使用します。小さいダニを摘み取るボタン式のピンセットと、大きいダニを掬い取る釘抜きのようなカップを備えますが、実際に使ったことはないので有効性は不明。専用の器具を使わず、ワセリンを塗布してマダニを窒息させる手法もあります。そもそも野外では皮膚を露出しないのが一番の対策であり、藪漕ぎの際は長袖長ズボンが基本装備。トレッキングパンツの裾を靴下でカバーするマダニ対策も有効です。
撥水性の高いA7サイズのメモ帳。応急処置を施した際、負傷の程度や処置の内容を記入する用途に使います。コンパクトでポーチに収納しやすく、雨に濡れた状態で書き込んでも破れないため、アウトドアで天候を問わず状況を記録できるのが本製品の強みです。メモ帳としての使用感は筆記具のページで紹介します。
普通の油性マーカー。メモ帳に応急処置の内容を書き込むほか、止血帯のTIMEタグに止血時刻を記入する用途に使います。米軍の場合はIFAKの一部として支給されるSharpie Fine Pointを用いますが、日本では入手しやすいマッキーで十分です。
コンビニや自販機で買えるペットボトル 0.5Lの水。応急処置の際、傷口の血や土を洗い流す用途に使います。水の携行をハイドレーションパックに依存したり、スポーツドリンクしか持っていない場合、応急処置に使えず困ったことになります。長旅でも日帰りの行程でも、必ず0.5Lの水を飲用とは別に携行。取り違えないように赤いビニールテープを巻いて区別します。